最新記事

米政治

総ざらいバイデンの外交10大課題 最も変化が大きいのは?

BIDEN’S 10 FOREIGN CHALLENGES

2021年1月29日(金)07時00分
ロビー・グレイマー、エイミー・マッキノン、ジャック・デッチ、クリスティナ・ルー

7.イスラエルには距離感

トランプ政権下、イスラエルはアメリカ外交政策のより大きな焦点になった。トランプはパレスチナ人への援助を削減し、アメリカ大使館をエルサレムに移転したが、いずれもトランプ政権がイスラエルと緊密に連携していることを示している。

トランプ政権はまた、イスラエルとアラブ4カ国(アラブ首長国連邦、バーレーン、スーダン、モロッコ)の国交正常化を仲介した。トランプ政権はこれを中東政策における偉大な成果と位置付けている。

バイデン政権は、より中立な立場を取る可能性が高い。

トランプの路線変更を批判していたバイデンは、エルサレムへの大使館移転を「近視眼的で軽薄な行為」と呼んだが、選挙キャンペーン中、彼は大使館はそのままエルサレムに置くと述べた。

また、トランプの下で削減されていたパレスチナ自治区のヨルダン川西岸とガザへのアメリカの援助と開発資金を復活させることを約束した。

バイデンは「2国家共存」を支持すると繰り返し述べている。しかしパレスチナ国家の未来は暗い。1月14日、トランプはアメリカ中央軍の管轄下にイスラエルを含めるよう命じた。これは親イスラエル派が長年主張してきた動きだ。

また1月11日にはイスラエルが、占領下のヨルダン川西岸に新たに800戸の入植者住宅を建設する計画を発表した。バイデン政権への危険な牽制球だ。

8.北朝鮮に打つ手なし

トランプと金正恩(キム・ジョンウン)の華々しい首脳会談にもかかわらず、北朝鮮は新型の潜水艦発射型弾道ミサイルらしきものを軍事パレードで見せつけ、バイデン政権を挑発している。

ヘリテージ財団上級研究員で元CIA工作員のブルース・クリングナーは「通常、北朝鮮は韓国やアメリカの新政権が発足すると、最初の数カ月間は彼らを『犬のように調教する』ため、何かしら行動する」と語る。

朝鮮労働党第8回大会での演説では、新兵器開発の野心的な計画が明かされ、アメリカの政権交代で北朝鮮が行動を変えることはないとの意思を示した。

magSR20210129bidens10-7.jpg

COP25に出席したグテレス国連事務総長 SERGIO PEREZ-REUTERS

9.気候変動には積極関与

政策において最も大きなUターンの1つは、気候変動をめぐるものだろう。トランプは、科学的証拠があり、実際壊滅的な自然災害が発生しているにもかかわらず、長い間気候変動の影響を軽視してきた。

彼は2015年のパリ協定からアメリカを脱退させ、アメリカ国内の環境規制を後退させた。

対するバイデンは気候変動を「現代の実存的な脅威」と呼ぶ。そしてジョン・ケリー元国務長官を気候変動問題担当の大統領特使に起用し、就任初日にはパリ協定に復帰するための大統領令に署名している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イケア、米国内の工場から調達拡大へ 関税で輸入コス

ビジネス

金融政策で金利差縮めていってもらいたい=円安巡り小

ビジネス

アングル:欧米小売、インフレ下でも有名人起用や価格

ビジネス

日経平均は4日ぶり反落、一時800円超安 利益確定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中