最新記事

台湾海峡

米U-2偵察機が中国の防空識別圏に進入、台湾への軍事行動を牽制

U.S. Spy Plane Spotted in Chinese Airspace Amid Tensions Between Countries

2020年12月11日(金)16時25分
ジョン・フェン

中国の防空識別圏に進入したU2偵察機「ドラゴンレディ」 REUTERS/U.S. Air Force/Staff Sgt. Brian Ferguson/Handout/File Photo

<米軍機がここまで中国沿岸に接近したのは10月以来。中国の台湾侵攻を警戒する米軍と、米軍の妨害を警戒する中国軍が火花を散らす>

航空機追跡データによると、12月10日、米空軍の偵察機1機が中国の防空識別圏(ADIZ)を通過し、中国東部の沿岸地帯から51海里(約95キロメートル)以内に進入した。

北京のシンクタンク「南海戦略態勢感知計画(SCSPI)」によれば、「ドラゴンレディ」の異名を持つ高高度偵察機U-2は韓国のソウルから出撃し、台湾海峡に進入。冷戦時代にロッキード社によって開発された同偵察機は、東シナ海上空の防空識別圏を縦断した後、中国東部・福建省の沿岸から約51海里、台湾北西部の沿岸地帯の約70海里(約130キロメートル)沖の地点まで引き返した。

同シンクタンクのデータによれば、米軍の偵察機が台湾海峡にここまで接近したのは、10月以来。米政府は、中国が台湾に対していかなる軍事行動を取るのも阻止しようと目を光らせている。

通常、航空機が他国の防空識別圏を飛行する場合には、その国の航空当局に事前に連絡を入れることとされている。だが防空識別圏は各国が独自に設定しているもので、国際的な決まりがあるわけではない。

航空機識別サイトの情報によれば、11月には、米空軍の爆撃機2機がグアムにあるアンダーセン空軍基地から出撃し、東シナ海上空の中国の防空識別圏に進入。人民解放軍(PLA)の迎撃機2機が出動したと報じられている。

2009年以降は偵察活動を強化

SCSPIは10月、本誌に対して、アメリカは2009年以降、中国上空に派遣する偵察機の数を2倍近くに増やしていると指摘。今では、南シナ海における米空軍機の年間飛行回数は1500回以上、米軍艦船の活動は年1000回に達しているという。

また同シンクタンクは11月の報告書の中で、米軍は民間の航空機を使ってこっそりと偵察活動を行っており、3月から11月にかけて黄海や(領有権争いのある)東シナ海と南シナ海の上空で160回以上にわたって偵察を行っている。

米軍が偵察活動を活発化させる一方、中台間の軍事的な緊張は高まっている。中国政府は、台湾はいずれ中国に統合されることが決まっていると主張しているが、台湾は蔡英文が総統に就任して以降、中国に対する抵抗姿勢を強めている。

今夏に国立政治大学選挙研究センター(台北)が実施した調査では、自分を「台湾人」だと認識している人が過去最高の67%にのぼった一方で、自分を「中国人」だと認識している人は2.4%と過去最低を記録した。とりわけ蔡英文が総統に就任し、ドナルド・トランプが米大統領に選出された2016年以降、アメリカは民主主義体制の台湾を支援してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランと同盟のシーア派組織、軍事力低下でも攻撃激化

ワールド

中国政府、国有石油大手からの備蓄放出要請を拒否=関

ワールド

イラク、原油生産日量140万バレルで維持=石油相

ビジネス

午前の日経平均は続落、一時1100円超安 中東情勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中