イギリスで今年の流行語に選ばれた「モッパン」って? コロナの巣ごもり生活で注目のコンテンツとは
韓国政府が禁止する動きまで
日本では、大食いなどの食事風景を配信するユーチューバーが多いが、モッパンは必ずしも大食いだけではない。おいしそうに食事を取るだけの映像もモッパンのカテゴリーに含まれている。最近では、配信者が料理をしてそれを食べるまでの動画も登場し、これはクッキング放送を略して「クッパン」と呼ばれているそうだ。
韓国では、「お元気ですか?」の代わりに「ご飯食べましたか?」いう挨拶が交わされるほど食文化が重要視されている。その流れで、人がおいしそうにご飯を食べる姿を見るのも大好きなのだろう。韓国人動画配信者が多いアフリカTVでは、一時期アップロードされる動画の10~15%をモッパンコンテンツが占めるほどの人気だったという。
あまりにも人気が急上昇したためか、2018年7月韓国政府は「国家肥満管理総合対策(2018∼2022)」を発表する際、「暴食の診断基準を作り、暴食を助長させるようなメディア(TV、インターネット放送など)及び広告に対するガイドラインを設ける」と発表した。いわゆる「モッパン規制」だ。これには、ネットを中心に多くの反発の声があがり、政府公式HPの設けられた国民請願にもすぐさま40件以上の抗議の請願が投稿され話題となった。
ちなみに、今年突然「モッパン規制」を開始した国がある。それが中国だ。中国は今夏8月から習近平国家主席の指示の下、モッパン規制キャンペーンを始めた。しかし、これは韓国のように肥満防止のためではなく、近年中国で増加している食品ロスの深刻化を食い止めるためのものだという。
人気モッパンスターに炎上騒ぎ
モッパンが国内外から注目を集めだすと、韓国内で続々と「モッパンスター」たちが登場しだした。フォロワー数の多いモッパン配信者は、タレント並みの人気をもち、食レポなどでTVに登場することもある。
ところが、今年に入りそんなモッパンスターたちの「案件隠し」が続々と明るみになり炎上し始めた。案件隠しとは裏広告とも呼ばれ、企業から広告費を貰っていながら、それを隠して動画を配信し、あたかも自分が好んで食べたり愛用したりしている商品かのように紹介することである。
280万人のフォロワー数を持つ「ツヤン」さんは、モッパンスターとして有名だったが、今年8月に裏広告が発覚し、その後活動自粛にまで追い込まれた。
さらに、フォロワー数475万人を超え、年間収入140万ドルを稼いでいた「ムン・ボクヒ」さんも、ツヤンさん同様と同時期の8月に裏広告が発覚した。そのうえ、大食いが持ち味だったムン・ボクヒさんだったが、実は食べた振りをして吐き出しているのではないかという疑惑までもち上がり、その後活動を自粛していた。ちなみに、二人とも3カ月後にユーチューブに動画を上げ活動を再開している。
10月には400万人のフォロワー数を持っていた男性モッパンスター「ボギョム」さんも、チキン屋さんとの裏広告が発覚し批判の的となった。裏広告疑惑は、モッパンチャンネルだけでなく、韓国の配信コンテンツ全体で大きな問題となっている。
同じ釜のメシを食べるイメージのモッパン
人がおいしそうにご飯を食べている姿は見ていて楽しく癒しを与えてくれる。これは万国共通のようだ。特に今年のように自粛生活が長く続き、人と会わずひとりでご飯を食べるときなど、モッパンを見ていると誰かと一緒にご飯を食べている気分になる。
よく、食=人とのつながり/コミュニケーションと言われるが、それが断たれてしまった今年、新たに注目を集めたKカルチャー「モッパン」が世界の人々の寂しさを埋める救世主の役割を担ったのかもしれない。