最新記事

動物

韓国、コロナ禍で動物たちが危ない 潰れる動物園、規制のない動物カフェ

2020年11月16日(月)19時12分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

コロナ感染予防で輸入禁止になった動物がカフェに!?

しかし、動物カフェのような狭い空間で多頭飼いし、さらに客とのふれあいをテーマにするには向かない動物も存在する。例えば、カンガルー科の「ワラビー」とのふれあいを目玉にしたカフェでは、ワラビーがカフェ内で飛び回り、負傷してしまうケースが目撃されている。

また、ある野生動物カフェでは、今年2月に韓国環境省がコロナ・ウイルス感染拡大防止のため、韓国内への輸入を禁止したジャコウネコや、その他の野生動物を狭いケージの中で展示している。

さらに、カフェによっては客に動物のおやつを買わせて、それを食べさせるふれあい体験を目玉にしている店も多く、動物がおやつに飛びつくようエサを少量しか与えてない店も存在するという。

法規制の遅れが問題を招く

現在の韓国の「動物園・水族館法」では、廃園予定日30日前までに「廃園申告書」と共に、動物や魚が今後どこで暮らしていくのか示す「保有生物管理計画書」を、自治体に提出しなくてはならない決まりになっているが、室内動物園ではそれすら未提出で店を閉めてしまうケースも多いという。

また、韓国では、室内動物園や水族館を民間で開園する際、登録制ですぐに開店することができるようになっている。開店/閉店が思ったよりも簡単にできてしまう制度にも問題があり、今回のコロナのような危機的状況に陥った時、そのしわ寄せが何の罪もない動物たちに押し寄せる形になってしまっている。

国会でも問題視されはじめ、今後は開園時に動物専門家の検査が必要な許可制に変更するよう「動物園・水族館法」の改正案が発議されている。

さらに、珍しい動物カフェが白熱するのを防ぐためにも、動物園外施設での野生動物展示禁止、及び野生動物販売業を許可制にする「野生動物の疾病全過程管理」制度の強化計画も行っていくという。

これにより、「珍しい野生動物カフェ争い」は落ち着きそうだが、既存の店が法的禁止に追い込まれた場合、残された動物たちについても、きちんと行く末を見守ってほしいところだ。

動物との新しい触れあいの模索も

そんななか、動物たちを救おうとユニークなアイディアを元に動き出した自治体を紹介しよう。まず、慶尚南道の昌原(チャンウォン市)市では、2023年までに市立の大規模なペット・ビレッジを作ることを発表した。

この大型施設では、動物保護センターはもちろん、里親を見つけられるようにふれあい動物カフェの運営も行われる。SNSにアップするために珍しい動物との2ショットを撮るためのカフェではなく、このように保護を目的とした動物カフェがどんどん増えていくことを願っている。

また、江原道にある華川(ファチョン)郡では、観光地の一つでもある「ベトナム派兵勇士出会いの広場」にAR動物園を開園した。

コロナ感染拡大により広場封鎖中にリニューアルしたというこの架空動物園では、仮想現実の3D野生動物たちが動き回っている。絶滅危惧種などの動物を輸入することなく動物園で触れ合える未来的な発想は何ともユニークだ。ハイテクの技術を用いたアイデアも今の韓国らしさがうかがえる。

今回は、コロナ禍やカフェブームに巻き込まれた韓国の動物たちを紹介したが、日本でも自粛期間中に、寂しさを紛らわせるためにペットを飼う人が急増しペットブームが起きたが、その後捨て猫や捨て犬などペットの置き去りも増えつつあるそうだ。

動物も生き物であり一つの大事な命だという事を今一度考えなおしてほしい。もし、それができないのなら、韓国のAR動物園のように仮想現実ペットを飼うことをお勧めしたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中