最新記事

生物

アメリカを震撼させるオオスズメバチ、初めての駆除方法はこれ

2020年11月5日(木)18時00分
松岡由希子

無線タグを取り付けて放たれた...... WSDA/Karla Salp/REUTERS

<日本をはじめアジアの分布するオオスズメバチがアメリカで確認されて問題になっているが、はじめての駆除作戦が実施された...... >

オオスズメバチは、日本をはじめ、東アジア、東南アジア、インドにわたって広く分布する世界最大のスズメバチだ。攻撃性が高く、毒性の強い多量の毒を持ち、毒針と強力な大顎で捕食対象を攻撃する。

米国では、2019年12月にワシントン州で初めてその生息が確認されて以来、ワシントン州農務省(WSDA)がその実態調査をすすめてきた。2020年7月にはカナダと接する同州ワットコム郡で初めてオオスズメバチが捕獲され、その後も同郡で数匹が捕獲されている。

無線タグを取り付けて放ち、無線タグを通じて巣の位置を追跡

ワシントン州農務省では、これまでにいずれのオオスズメバチもワットコム郡で捕獲されていることから、オオスズメバチの巣が同郡内にあると推定し、地域住民の協力のもと、数百カ所にワナを仕掛けた。ワナを仕掛けてオオスズメバチをおびき寄せ、捕獲して無線タグを取り付けたうえで解放し、無線タグを通じて巣の位置を追跡しようという作戦だ。

10月21日、オオスズメバチ2匹の捕獲に成功。ワシントン州農務省の公式ツイッターアカウントでは、無線タグを取り付けられたオオスズメバチがイチゴジャムを食べる様子が投稿されている。


その翌日の10月22日には、ワットコム郡ブレインの私有地にある樹洞でオオスズメバチの巣が見つかった。米国で初めてオオスズメバチの営巣が確認されたことになる。数十匹のオオスズメバチがこの巣を出入りする様子は、ワシントン州農務省の職員によって目撃されている。

ワシントン州農務省の昆虫学者らがこの巣の駆除を実施

10月24日、防護服に身を包んだワシントン州農務省の昆虫学者らがこの巣の駆除を実施した。まず、真空ホースを挿入するスペースだけを残して、高さ約10フィート(約3メートル)の巣の入口の隙間に気泡パッドを詰め込み、木をセロハンで包んだ。その後、外側から木を叩いて巣にいるオオスズメバチを起こし、巣から出てきた85匹のオオスズメバチを掃除機で吸引。さらに二酸化炭素を木の内部に送り込み、巣に残っているオオスズメバチを駆除した。一連の作業は早朝から約3時間半で完了した。

RTX8577J.JPG

WSDA/REUTERS

オオスズメバチは、米国では、ミツバチを捕食し、その個体数を激減させるおそれのある侵略性外来種だ。オオスズメバチがどのようにして米国に侵入したのか、米国内でどのくらい巣があるのか、どの地域まで分布が広がっているのかなど、まだ明らかになっていない点も少なくない。この数年内に駆除できなければ、米国で定着してしまうおそれがあることから、今後も実態調査や駆除作業が続けられる見込みだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中