最新記事

BOOKS

多様化する引きこもり 9割がコンビニOK、20年働いた後に引きこもる人も

2020年11月2日(月)11時20分
印南敦史(作家、書評家)

Newsweek Japan

<「引きこもり」と言えば、ずっと自室から出ることがなく、親もその姿を見ない――勝手なイメージが広がっているが、日本に100万人いる引きこもりの現状は多種多様だ>

『コンビニは通える引きこもりたち』(久世芽亜里・著、新潮新書)の著者は、1994年から引きこもりなどの若者の支援をしている「認定NPO法人ニュースタート事務局」のスタッフ。訪問活動と共同生活寮の運営が同法人の業務の中心で、これまでに1600人以上を支援してきたという。

本書ではそんな経験に基づき、引きこもりと彼らを取り巻く状況について説明している。

ところで「引きこもり」という言葉を聞いて多くの人は、「ずっと家の中にいて、外に出ない人」を思い浮かべるのではないだろうか? 正直なところ、私の中にもそんな印象が少なからずあった。

ところが著者によれば、それは間違いであるようだ。だとすれば、勝手なイメージと乖離した"リアルな"引きこもりの実態とはどのようなものなのだろうか?


 アキラ君(仮名)は現在22歳。小さい頃から人間関係が苦手で、友人があまりいないタイプでした。大学に入って間もなく不登校になり、そのまま中退。その後何もしないまま、約3年が過ぎています。両親は働いているので、日中は家で1人。昼頃に起きて、家にあるものを食べながら、リビングでテレビなどを見ています。
 両親が帰宅する夕方頃からは、自室でパソコンに向かい、ゲームをしたり動画を見たりして過ごします。廊下で親と顔を合わせて話しかけられると、普通に返事もします。家族が寝静まってから用意してある夕飯を食べて、そのまま夜中までパソコンです。バイトしてみたらと親には言われるのですが、一度も働いた経験がなく、応募する勇気も出ません。週に何度かは近所のコンビニに行き、もらっている小遣いでお菓子や飲み物を買います。たまに電車に乗って、少し遠くまで服などを買いに行くこともあります。年に2、3回は、好きなアイドルのコンサートに出かけます。(11~12ページより)

これは特殊な例ではなく、よくいる引きこもりの生活。統計上でも、引きこもりと言われている人の9割弱は、近所のコンビニ程度の外出はできているのだという。

ずっと自室から出ることがなく、親が部屋の前まで食事を運び、食べ終わったら食器を廊下に出しておく。親もそれを取りに行くだけで、何年も我が子の姿を見ていない――。

外出はできて、買い物時には店員と必要最低限の話はし、道端であった近所の人とも挨拶程度はするけれど、親しく会うような友人はいない――。

どちらも引きこもりと呼ばれる人たちのあり方だろうが、一般的には前者を思い浮かべる人が多いのではないか。しかし実際の引きこもりは、後者のタイプが大半だというのだ。さらに言えば、かつての引きこもりに見られたような暴力を振るタイプも少ない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中