最新記事

教育

スクールカーストの「階級」を決めるのは、体育の得意度?

2020年10月28日(水)16時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

勉強といっても複数の教科があるが、教科ごとに得意群と不得意群に分け、友人が多い子の割合を比べると面白い傾向が出てくる。得意な教科を尋ねた設問で当該教科を選んだ子を得意群、それ以外を不得意群とした。<表1>は、友人がとても多いと考えている児童の率(図1の青色)を、得意群と不得意群で比較したものだ。

data201028-chart02.jpg

どの教科を見ても、友人が多い子の割合は、不得意群より得意群で高い。座学では、社会と外国語において差が比較的大きい。外国語は、2008年改訂の学習指導要領より高学年で実施されている外国語活動(現行では教科の外国語)で、オーラルでのコミュニケーション能力の素地を養うものだ。これらが得意な子は、海外旅行経験などが豊富で話が面白いためかもしれない。

だが、それ以上に差が明瞭なのは体育だ。不得意群では38.6%であるのに対し、得意群は60.3%で、21.7ポイントもの差が開いている。これは経験則に照らしても頷ける。運動ができる子はスターになりやすく、不得手な子は体育の授業で恥をかいたりすることが多い。筆者自身、体育の授業に良い思い出はなく、皆の前で一人ずつ跳び箱を跳ばせるのは止めてほしい、と思ったものだ。

いわゆる「スクールカースト」の決定要因として、運動・スポーツの出来は大きい。だが、どの子どもも何らかの得意なものは持っている。必要なのは、それをすくい上げてほめたたえることだ。他者からの承認欲求は、思春期の年代では特に強くなる。

教育の目的は調和のとれた人間形成だが、バランスにとらわれすぎると、不得意なことの矯正ばかりに目がいきがちになる。それよりも得意なことを認識させ、肯定的に自己を捉え、明るい将来展望を持たせたい。丹念な児童観察・理解をもとにそれを成し遂げるのは、専門職としての教師の役割だ。

<資料:国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2016年度)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米軍、不法移民対応で南部国境に1140人増派 総勢

ワールド

メキシコが対中関税に同調と米財務長官、カナダにも呼

ワールド

情報BOX:米ウクライナ決裂、米議員の反応さまざま

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週連続増=ベーカー・
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    米ロ連携の「ゼレンスキーおろし」をウクライナ議会…
  • 6
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 7
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 8
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    「売れる車がない」日産は鴻海の傘下に? ホンダも今…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中