最新記事

グーグル

米司法省「消費者のための」グーグル解体は筋違い

Break Up Google? Not So Fast, Consumers and Experts Say

2020年10月23日(金)17時25分
スコット・リーブス

消費者はグーグルの味方?(ニューヨークのビルに取り付けられたグーグルのサイン) Carlo Allegri-REUTERS

<消費者が好んでグーグルを使っている限り事業解体は不満と混乱を生むだけだと専門家>

米司法省は10月20日、グーグルを独占禁止法違反で提訴した。この訴訟の結果としてグーグルが解体されることになれば、消費者の間に不満と混乱が生じるだろうと、あるアナリストは予想する。

調査会社フォレスター・リサーチの上級アナリスト、コリン・コルバーンは本誌に対し、「この訴訟が消費者にどのような利益をもたらすのか分からない」と語った。「総じてプラスになるとは思えない。大抵の人はグーグル検索を気に入っている」

すぐに何かが変わるということはないだろう。グーグルの親会社であるアルファベットは、潤沢な手元資金を使って徹底抗戦するだろう。コルバーンは、訴訟が10年にわたって延々と続く可能性も十分にあると指摘する。

グーグルが各種スマートフォンに自社の検索エンジンをプリインストールさせるのを阻止して、Bing(ビング)やヤフー、DuckDuckGo(ダックダックゴー)などの企業により多くのチャンスを与えても、消費者がちょとした操作で使い慣れたグーグルの方に変えれば結局何も変わらないとコルバーンは言う。「自分たちの好きなものに悪影響が及ぶと考えれば、消費者はグーグルの味方をするだろう」

同じような訴訟の繰り返しになる可能性

ウェブトラフィック分析サービスを提供するスタットカウンターによれば、現在グーグルはアメリカの検索市場で88.14%のシェアを保有している。これに対してBingは6.67%、ヤフーは3.19%、DuckDuckGoは0.12%、Ecosia(エコジア)は0.12%でMSNは0.05%だ。

コルバーンは今回の提訴について、グーグルが検索部門で独占的な地位を築くのを許した(一部には政府の監視の目が甘かったからだという指摘がある)ことに対する、政府による「償い」の可能性もあると言う。

訴訟の行方次第では、フェイスブックやアマゾンなどの主要企業が恩恵を受けることになる可能性がある。いずれの企業も現在、自社の顧客向けの広告配信技術を開発中だ。グーグルが今後、政府との和解の一環として広告事業の売却を余儀なくされれば、これらの企業が得をすることになるだろうとコルバーンは言う。

もしグーグルの広告事業が解体されれば、ベンチャーキャピタルが新たな技術を携えて市場に参入し、新たな市場リーダーが台頭して独占的地位を築く可能性もある。そうなれば司法省は、「大きな利益をあげて経営が安定している革新的な企業による市場独占に関する懸念」という、今とまったく同じ問題に直面することになる。要するに、今後も主な登場人物(や企業)の名前は変わっても、内容はほとんど同じ訴訟がずっと続く可能性があるということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中