最新記事

イスラエル

ネタニヤフはノーベル平和賞受賞に値するか?

The Netanyahu Dilemma

2020年9月29日(火)19時00分
トム・オコナー

来年のノーベル平和賞候補としてネタニヤフを推す声が早くも高まっているが、彼の受賞を容認し難いと考える人も少なくない。ネタニヤフは、パレスチナ占領地への入植活動を推進し、占領地の併合を計画していることを理由に、国連や人権団体から再三批判されてきた。しかも、国内で収賄などの罪で起訴されているという問題もある。

もっとも、119年の歴史を通じて、ノーベル平和賞が物議を醸したことがなかったわけではない。そもそも、賞の名前の由来になったアルフレッド・ノーベルは、ダイナマイトを発明したことで「死の商人」と呼ばれていた。

過去には、アドルフ・ヒトラーやヨシフ・スターリンが候補として推薦されたこともあった。1973年に受賞したヘンリー・キッシンジャーは、ベトナム戦争の間、米外交を取り仕切った人物だ。

1978年にイスラエル初のノーベル平和賞受賞者になったメナヘム・ベギンは、エジプトのアンワル・サダトと結んだ和平合意が評価された。しかし、ベギンはかつて武装勢力と結び付きがあった。

1994年の受賞者であるイスラエルのイツハク・ラビンは、その1年後にテルアビブで極右ナショナリストにより暗殺された。ラビンと共同で受賞したパレスチナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト議長(当時)も武装勢力と結び付きがあった。

真の偉業とは言えない?

近年、イスラエルとアラブ諸国の関係は、静かに、しかし大きく変わってきた。両者はイランという共通の敵を前に、通信、医療、さらには国家安全保障でも、水面下で連携するようになっている。

そのような関係が既に確立されていることを考えると、今回の国交正常化合意は、見掛けほど特別なものではないのかもしれない。

「国交正常化の合意に達したことの意義は大きいが、かつての敵国同士が平和条約を締結したのとはわけが違う。UAEもバーレーンも、イスラエルと戦火を交えたことはない」と、駐エジプト米大使、駐イスラエル米大使を歴任したプリンストン大学のダニエル・カーツァー教授は本誌に語っている。

「ノーベル平和賞に値するほどの成果ではない。この賞は、イスラエルの首相がパレスチナとの和平を成し遂げた場合に与えられるべきものだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米はテック規制見直し要求、EUは鉄鋼関税引き下げ 

ビジネス

ウォラーFRB理事、12月利下げを支持 1月は「デ

ワールド

トランプ氏、オバマケア補助金の2年間延長を検討=報

ワールド

元FBI長官とNY司法長官起訴、米地裁が無効と判断
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中