ネタニヤフはノーベル平和賞受賞に値するか?
The Netanyahu Dilemma
来年のノーベル平和賞候補としてネタニヤフを推す声が早くも高まっているが、彼の受賞を容認し難いと考える人も少なくない。ネタニヤフは、パレスチナ占領地への入植活動を推進し、占領地の併合を計画していることを理由に、国連や人権団体から再三批判されてきた。しかも、国内で収賄などの罪で起訴されているという問題もある。
もっとも、119年の歴史を通じて、ノーベル平和賞が物議を醸したことがなかったわけではない。そもそも、賞の名前の由来になったアルフレッド・ノーベルは、ダイナマイトを発明したことで「死の商人」と呼ばれていた。
過去には、アドルフ・ヒトラーやヨシフ・スターリンが候補として推薦されたこともあった。1973年に受賞したヘンリー・キッシンジャーは、ベトナム戦争の間、米外交を取り仕切った人物だ。
1978年にイスラエル初のノーベル平和賞受賞者になったメナヘム・ベギンは、エジプトのアンワル・サダトと結んだ和平合意が評価された。しかし、ベギンはかつて武装勢力と結び付きがあった。
1994年の受賞者であるイスラエルのイツハク・ラビンは、その1年後にテルアビブで極右ナショナリストにより暗殺された。ラビンと共同で受賞したパレスチナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト議長(当時)も武装勢力と結び付きがあった。
真の偉業とは言えない?
近年、イスラエルとアラブ諸国の関係は、静かに、しかし大きく変わってきた。両者はイランという共通の敵を前に、通信、医療、さらには国家安全保障でも、水面下で連携するようになっている。
そのような関係が既に確立されていることを考えると、今回の国交正常化合意は、見掛けほど特別なものではないのかもしれない。
「国交正常化の合意に達したことの意義は大きいが、かつての敵国同士が平和条約を締結したのとはわけが違う。UAEもバーレーンも、イスラエルと戦火を交えたことはない」と、駐エジプト米大使、駐イスラエル米大使を歴任したプリンストン大学のダニエル・カーツァー教授は本誌に語っている。
「ノーベル平和賞に値するほどの成果ではない。この賞は、イスラエルの首相がパレスチナとの和平を成し遂げた場合に与えられるべきものだ」