ナイジェリアで性暴力厳罰化──性犯罪者の去勢には疑問の声も
犯罪抑止効果や人権問題など
性犯罪の刑罰として去勢を導入している国は他にもある。NYTによると、チェコでは暴力的な性犯罪者に対し、自由意思(刑罰としての強制ではなく)で去勢手術を受ける選択肢を与えているという。また米国の複数の州でも、化学的去勢(男性ホルモンであるテストステロンを薬物で低下させるもので、効果は永続的なものではない)を行う法律がある。
米国アラバマ州は昨年、13歳未満の子どもに性犯罪を犯した者に対して、化学的去勢を行う決定をした。その際、スティーブ・ハースト・アラバマ州議員は地元メディアに対し、「子どもに一生の傷を負わせるのなら、犯人も一生の傷を負うべき」だとして、化学的去勢ではなく手術による去勢の方が良かったと述べていた。
とはいえ、ナイジェリアのカドゥナ州での決定同様、性犯罪の刑罰としての去勢には他国でも反対意見が少なくない。たとえば、人権侵害だとする考えだ。モルドバの憲法裁判所は2012年、小児性愛の犯罪者に対して化学的去勢を行うのは、基本的人権の侵害だとして、化学的去勢を禁止する判決を下している(ロイター通信)。
インドネシアでは2016年、14歳の少女が集団レイプされ殺害された事件を受けて、小児性愛で有罪となった場合、化学的去勢、終身刑、死刑などと、より厳しく罰する法律を可決させた。この際も、人権団体などが「暴力で暴力を止めることはできない」や「化学的去勢で子どもを対象とした性犯罪は減っていない」などとして反対していた(英BBC)。
司法精神医学者のルネー・ソランティーノ博士はアラバマ州が化学的去勢を決定した当時、米ニュースメディアのヴォックスに対し、どの性犯罪者に対しても化学的去勢が効果があるわけではないと話していた。
ソランティーノ博士によると、子どもに対する性犯罪にはさまざまな理由があり、小児性愛はその一つに過ぎない。そのため同博士は、化学的に男性ホルモンを減らすだけでは、一部の性犯罪にしか効果がないと指摘。治療や医学的評価を合わせるべきだとの考えを示している。