最新記事

気温

30年前の北半球最低気温が「発見」される

Coldest Temperature Ever Recorded in Northern Hemisphere Uncovered

2020年9月24日(木)15時40分
アリストス・ジョージャウ

過去最低気温はグリーンランド氷床の観測所で記録されていた  Lucas Jackson-REUTERS

<世界にはまだ埋もれた気温の記録がある。それを発掘すれば、温暖化の真のトレンドが見つかるかもしれない>

世界気象機関(WMO)は、約30年前に記録された-69.6℃が「北半球で記録された過去最低気温」だと認定した。

英国王立気象学会論文誌Quality Journal of the Royal Meteorological Societyに発表された検証結果によれば、この気温は1991年12月22日、グリーンランド氷床(南極大陸に次いで世界で2番目に大きな氷の塊)の頂上部近くに設置された自動気象観測システムが観測したものだ。

WMO気象気候アーカイブ委員会の「気候調査官」による調査の結果、観測から約30年を経てようやくこの記録が明らかになった。

気候調査官たちは、これまで長年見過ごされてきた気象データの分析・検証作業を行うのが任務で、今回のように時折、新たな記録を発見・公表している。

今度約3000メートルのところに設置されているグリーンランド氷床上の気象観測所は、WMOが世界の気象極値(最高・最低気温など観測値の両極端の値)の評価を始めるよりも前の1990年代前半に設置され、稼働していた。

これまでの「過去最低」を約2℃下回る

調査官たちは、かつてこの気象観測所の責任者だった複数の科学者(ウィスコンシン大学マディソン校)を見つけ出し、当時使われていた観測装置や観測方法を分析。さらに1991年12月の気象条件についても分析した上で、今回の「記録」を認定した。

WMOの極端気象・気候現象報告者であるランドール・チェルベニーは、声明で次のように述べた。「今回の調査は、今の気候科学者たちが現代の気候記録を確認できるだけでなく、過去の重要な気候記録を見つけ出し、質の高い長期的な気候記録を作成して、気候変動の影響を受けやすい地域のために役立てる能力があることを示している」

新たに認定された気温は、これまで過去最低と認定されていた気温を2℃近く下回る。これまでの過去最低記録は、ロシアのベルホヤンスク(1892年2月)とオイミャコン(1933年1月)に観測された-67.8℃だった。ちなみに世界最低記録は、1983年7月21日に南極のボストーク観測基地で観測された-89.2℃だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NATO事務総長がトランプ氏と会談、安全保障問題を

ビジネス

FRBが5月に金融政策枠組み見直し インフレ目標は

ビジネス

EUと中国、EV関税巡り合意近いと欧州議会有力議員

ワールド

ロシア新型中距離弾道ミサイル、ウクライナが残骸調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中