最新記事

イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界

イアン・ブレマーと旧知のサム、だから実現したアフターコロナ特集の舞台裏

2020年9月1日(火)18時00分
前川祐補(本誌記者)

本誌最新号の特集でアフターコロナの世界を語ったイアン・ブレマー Richard.Jo

<稀代の国際政治学者イアン・ブレマーと、「全米最高の教授」ジョージタウン大学サム・ポトリッキオ教授が対談。ブレマーをよく知る聞き手のポトリッキオが、本誌「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集を振り返る>

ちょっと待ってくれ。あと10分話そう――。2020年8月某日、日本時間では午前3時になろうとしていた。本誌のロングインタビューに答えていた国際政治学者のイアン・ブレマーは、まだ語っていないことがあると言わんばかりに取材時間を延ばしてくれた(既に大幅にオーバーしていたのだが)。

次の予定に少し遅れると、ブレマーが秘書らしき人にメールで伝える姿をZOOMの画面越しに見ながら、彼と対談していた本誌コラムニストのサム・ポトリッキオ(ジョージタウン大学教授)と目が合った。「ほら」というサムの声が聞こえるようだった。ブレマーをよく知るサムは取材前、「寝だめしたほうがいい」と、私にアドバイスをくれていたからだ。
20200908issue_cover200.jpg
言わずと知れた国際政治学者のイアン・ブレマー。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した地政学リスク分析の第一人者は、本誌の最新号特集「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」のために、ニューヨークのオフィスから国際情勢を読み解くヒントを丁寧に、しかし情熱的に語ってくれた。

聞き手となったのは「全米最高の教授」の1人と称される、本誌コラムニストのサム・ポトリッキオだ。サムと稀代の国際政治学者ブレマーによる8ページに及ぶ対談には、気心の知れた間柄だからこそ語られた、率直かつ直球的な内容が詰まっている。

「当座のビジネスが回っているからと言って、世界的課題を無視してきたツケを払っている。コロナ危機は、Gゼロ世界で起きた最初のグローバル危機だ」

こう警告を発したブレマーが明かす、未曾有の危機を拡大させた世界に対する怒りと、知識人たちが続ける「空騒ぎ」への皮肉、そして、それでも未来の国際秩序に絶望しない根拠――。

ここではポトリッキオに、対談を振り返り、特集の見どころを語ってもらった。

――対談のなかで、イアン・ブレマーは率直かつオープンにコロナ禍の世界情勢に苦言を呈してくれた。と同時に、われわれがこの災厄を乗り越えるためのヒントも与えてくれた。改めてブレマーが示した見識ついての印象を教えてほしい。

ポトリッキオ:対談をして改めて、なぜ世界中の主要企業や投資家がブレマーと彼が率いるユーラシアグループに地政学リスクの分析を依頼するのか、その理由が容易に理解できた。

この対談で得られた見識は、世界情勢を正しく予測するために高速回転している彼の頭の中をのぞき見させてもらったような、特別なギフトだ。コロナ危機は、ブレマーが主張するGゼロ(主導国なき)世界を際立たせているが、彼のような知の巨人と深く対話する機会も与えてくれた。

ブレマーは世界で生じている混乱ぶりを、「ちっとも驚きではない」としている。対談で特に印象的だったのは、世界中の知識人やコメンテーターが大げさに騒ぎ過ぎている点についてだ。そんなのは空騒ぎだと、教えてくれた。最初は彼のそうした指摘に驚いたが、話を聞き終える頃には素直に納得していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中