ファーウェイ・TikTokが対中制裁を生き抜く理由
THEY WILL SURVIVE
ファーウェイ、そしてTikTokも中国市場だけで十分 MATTHEW CHILDS-REUTERS
<コロナ禍でグローバル化が揺らぎ、米中の対立が激化、中国IT企業は海外展開できなくなり破綻の危機に陥る──というのは本当か? 本誌「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集より>
今の危機をどう捉えているか? ファーウェイ・ジャパン(華為技術日本)の王剣峰(ジェフ・ワン)会長は筆者の質問にこう返した。
「20年前のほうがつらかったなぁ」
世界的な大企業であるファーウェイだが、1987年の創業以来、何度か存続の危機に直面してきた。昨年来の米国による制裁も大事件だが、王会長が入社した2001年はドットコム・バブル崩壊の影響からいつ倒産してもおかしくない状況だった。王の言葉は強がりに聞こえなくもないが、さて、いずれの危機がより重大なのか?
米国の制裁は確かに厳しい。だが、20年前と違うのは中国市場の大きさだ。中国のGDPは2019年に約14兆ドルと、2001年の約10倍にまで成長している。世界市場から閉め出されたとしても中国市場を取るだけで「世界的大企業」の座を維持できてしまう。
ファーウェイは2020年第2四半期にスマホ出荷台数世界1位を記録した。米国の制裁でグーグルのサービスが搭載できず世界販売は落ち込んでいるが、新型コロナウイルスの抑え込みに成功した中国での販売がいち早く回復し、初の1位奪取を成し遂げた。5G基地局の販売も好調だ。英国での不採用が決まるなど基地局でも海外販売は苦戦しそうだが、中国だけで400万局以上、日本の20倍近い需要がある巨大市場である。この中国市場を守れれば、ファーウェイが致命傷を負うことはない。
ファーウェイに続いて米中対立の最前線に引きずり出された動画アプリ「TikTok」の運営企業バイトダンスについても構図は似ている。同社は非上場企業のため収益構造の詳細は明らかでないが、海外事業はまだ投資段階で利益を生み出す状況にない。中国で稼いだ金を注ぎ込み、赤字を垂れ流しながらグローバルに戦ってきた。海外市場から撤退すれば、高収益の中国市場だけが残る。
もちろん、両社にとって制裁が痛手であることは確か。世界トップの企業になるという輝かしい夢からは一歩後退するのだから。だがそれで破綻するわけではないし、中国市場だけでも大企業として生きていける。中国のGDPは世界2位、成長ペースは鈍化したとはいえ、そろそろ日本の3倍に達しようかという巨大経済体だ。米国がどれだけ圧力をかけても、中国との関係を維持する国も多い。経済制裁で降伏させようとしても、どだい無理な話である。
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