最新記事

2020米大統領選

トランプはもう負けている?共和党大会

The Republican National Convention Is Already Over

2020年8月25日(火)19時10分
マイケル・ハーシュ

通常、大統領候補は4日間にわたる党大会の最終日の指名受諾演説まで会場に姿を見せることはないが、党大会の運営者たちによれば、トランプは期間中毎日、演説する予定だという。

トランプは1時間近くに及んだ(おそらく即興の)演説の中で、「今回の大統領選は、アメリカ史上最も重要な選挙だ」と宣言した。

多くの専門家もこの点については同意見だろうが、トランプが主張するのとは逆の理由からだ。歴史や外交、政治の専門家たちは、トランプが続投することになれば、議会や裁判所を無視して弾劾裁判にまでかけられた大統領が国政を牛耳ることで、アメリカの政治システムに大きな修復しがたいダメージがもたらされると指摘してきた。

専門家は、第2次大戦以降、アメリカが率いてきた欧米式国際システムの存続も懸念している。「アメリカ第一主義」を掲げるトランプが1期目に、同システムからの離脱にかなりのエネルギーを注いできたからだ。トランプは地球温暖化対策の国際的な取り組みである「パリ協定」やイラン核合意、中国を開かれた公正な貿易規範に従わせるのが主目的のTPP(環太平洋経済連携協定)など、数々の主要な枠組みから離脱した。バイデンは、自分が大統領になれば製造業の国内回帰により重点を置きつつ、TPPの再交渉を試みて中国政府に改めて圧力をかけていくつもりだと言っている。

投票率は低い方がいい

しかしトランプは、バイデンが大統領になればアメリカは中国に呑み込まれるだろうし、彼は「超過激な左派のいかれた判事」を指名するだろうと決めつける。自分が再選すれば、再びアメリカ史上最高の好景気が続くという(実際にはパンデミック後の米GDPは縮小しているし失業率は依然として10%を超えている)。「中国から伝染病がやって来る前のアメリカは、これまで見たこともないような、アメリカ史上最高の経済的な成功に向かっていた」とトランプは言った。

またトランプは、演説のかなりの時間を割いて郵便投票を批判した。今度の大統領選では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のなか、密になりがちな投票所に行く代わりに郵便投票が奨励されている。だがトランプは、民主党は普段は投票に行かない(低所得の)有権者に投票用紙を送付して、票を「集めて」いると主張。「彼らはパンデミックを利用して選挙を盗もうとしている」と述べた。事実上、自分が勝つには投票率が低い方がいいと主張したに等しい。

トランプは自分の支持基盤が大挙して投票に行き、自分を勝たせてくれることを期待しているとあからさまに語った。共和党大会で演説を行う面々はいずれも、そうした「身内」ばかりだ。

<参考記事>アメリカ大統領選挙の一大イベント「党大会」 最終盤戦へ号砲
<参考記事>トランプの元側近で極右のバノン、「壁」建設資金の私的流用容疑で逮捕

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

8月米卸売在庫横ばい、自動車などの耐久財が増加

ビジネス

10月米CPI発表取りやめ、11月分は12月18日

ビジネス

ミランFRB理事、12月に0.25%利下げ支持 ぎ

ワールド

欧州委、イタリアの買収規制に懸念表明 EU法違反の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 3
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中