聖域「王室」にも迫る タブーに挑むタイ若者の民主活動
その後、新型コロナウイルスを理由にタイがロックダウン(都市封鎖)に入り、抗議行動は中断した。
だが、スマートフォンや自宅に持ち帰ったノートパソコンを通じて、活動家たちはオンラインで圧力をかけ続け、君主制への疑問も高まっていった。
3月、タイ語版ツイッターでは、「#whydoweneedaking?(なぜ我々に国王が必要なのか)」というハッシュタグが100万回以上も使用された。フェイスブックでも、君主制を揶揄することの多いタイ語のグループが85万人以上のユーザーを集めている。
抗議行動参加者たちが、再び大挙して街頭に姿を見せたのは7月18日だった。新型コロナによる観光産業の崩壊による経済的な痛手に対する怒りと、亡命中のタイ人活動家が拉致されたと見られる件が刺激になった。これは複数の失踪事件の最新の例で、人権擁護団体によれば、ワンチャレアーム・サトサクシット氏(37)が6月にカンボジアで正体不明の襲撃者によって連れ去られ、その後目撃されていない。タイ政府・軍は関与を否定している。
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一枚岩ではない抗議行動
一部のアナリストは、最近の若者主導の抗議行動は、1970年代の学生による民主化要求運動に似ていると言う。
タイでは、軍による政治介入が繰り返し行われてきた。1932年に絶対王政による支配が終って以来、クーデターの成功例は13回を数える。1973年と1992年には、軍政指導者による弾圧により抗議参加者が殺害されたことを受けて、事態沈静化のためにプミポン国王が介入している。
タイの若い世代も一枚岩ではない。民主派の抗議行動に対抗して、規模は劣るものの、政権を擁護する王党派による独自の集会も行われている。
元専門学校生で王党派のトトサポル・マヌンヤラットさんは、「タイ人の多くは、君主制に対する攻撃的な言動に眉をひそめる」と言う。彼は国王への敬愛の念から、バンコクでの反抗議行動に参加したという。
アナリストのあいだには、深い分断は政権にとってジレンマを生んでいるという声もある。
インターナショナル・クライシス・グループの東南アジア担当上級アナリスト、マシュー・ウィーラー氏は「批判の動きを弾圧すれば、反撃を受けるリスクがある」と語る。「だが放置しておけば、タブーの壁が崩れるリスクがある」
(翻訳:エァクレーレン)
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