最新記事

感染症対策

陽性者急増、名古屋の医師が懸念する「市中感染」のリアル

2020年8月6日(木)19時00分
関口 威人(ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

ドライブスルー検査でも、家族で来るなら検査対象の人は助手席でなく、後部座席に乗って、かつ窓は必ず開けてもらいたい。そして個々の家庭の中でも、マスクをして換気をし、接触をできるだけ避けた生活様式にしてほしい。そうすれば、仮に子どもや親がコロナであっても家庭内感染は広がらない。

國松淳和さんという内科医の先生が書いているが、手洗いの数にしても、今まで外出帰りなどで1日2回洗っていたのを、コロナ禍だから10回にすればいいかというと、その程度ではぜんぜん足りていない。

僕ら医療者は、何か行為をするたび、たぶん1日に50〜100回ぐらい、アルコール消毒を含めて手を洗っている。そこまでに達していればリスクは減るが、達していない人ならまだまだ洗い足りないので、自分がかかってしまう可能性も、人にうつしてしまう可能性もあるということだ。

「『Go To』をなぜ前倒しにしたのかわからない」

そこは過敏になってもなりすぎることはなく、「誰でもコロナ」と思って生活するしかない。そこまで対策が取られていればコロナは怖くないし、経済を回してもいいと思う。「Go Toトラベル」は、そうした意識づけが国民に徹底できていない時点でスタートしてしまった。なぜ前倒しにする必要があったのか、ぜんぜんわからない。

――コロナも経済も悪化する中で、生活困窮者支援の現場は。

私が理事長をしているNPO法人「ささしまサポートセンター」では、名古屋市内で行われる生活困窮者向けの炊き出しに毎週参加し、ボランティアの医師や看護師による医療・健康相談などを開いている。

炊き出しは屋外なのでリスクは少ないが、1人1人に手指消毒や距離を置いて待ってもらう対策を呼び掛けている。まだ炊き出しに来る人がものすごく増えている状況にはないが、こんな時代なので、誰もが同じ状態になり得る。生活保護のハードルはどんどん低くしていかないと。

生活保護の受給は当然の権利であり、恥ずかしいことでも何でもない。保護を受けながら態勢を整えて、収入が得られるようになったら少しずつ元の生活に戻していけばいい。僕自身は、町医者として場末の診療所で例えコロナであろうが診療し、生活困窮者に対しては炊き出しに来てもらえれば無料で診察する。貧富の差があっても、誰にでも医療への道筋をつけてあげられるようなシステムを自分なりにつくっているつもりだ。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事へのリンクはこちら
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中