最新記事

自殺率

水道水に含まれるリチウムが自殺防止に?

2020年8月4日(火)17時40分
松丸さとみ

とはいえ、2019年に英医療専門誌「パブリック・ヘルス・エシックス」(公衆衛生倫理)に掲載された、飲料水にリチウムを含ませることに対する倫理面を論じた記事では、リチウムの安全性が確認されれば、と前提条件を示した上で、虫歯予防での水道水へのフッ素添加をよしとするなら、リチウムも問題ないはずだとしている(フッ素もリチウム同様、もともと水道水に微量が含まれているが、虫歯予防を目的に水道水にフッ素を添加している国も少なくない)。

認知症の治療や予防にも期待

BSMSの発表文によると、「魔法のイオン」と呼ばれることもあるリチウムは、双極性障害や気分障害と呼ばれる症状に苦しむ人に対し、躁うつエピソードや気分の安定、自殺の防止などを目的に広く使われている。

さらに、衝動を抑えたり、慢性的な薬物乱用などに対処したりするために使用される場合もあるという。また最近の研究では、アルツハイマー型を含む認知症にも効果があることが示されており、認知症予防としてもリチウムへの期待が高まっている。

サイエンス・アラートによると、医療で使われるリチウムは通常1日200ミリグラム以上と比較的量が多く、副作用にも注意が必要だという。研究チームの1人、キングス・カレッジ・ロンドンのアラン・ヤング教授は、医療で使用されるリチウムと比べ、水道水に含まれるリチウムは長期間にわたり体に取り入れている可能性はあるものの、かなり微量だと説明している。

メモン教授は、世界では現在80万人以上が自殺し、15~24歳では死因第1位になっており、世界的に心の病が広がり自殺率が高まっていると説明。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受け、心の健康を損なう人が増えているため、メンタルヘルスを改善し、不安やうつ、自殺を減らす手段の活用はこれまで以上に重要であるとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、ウクライナ支援で2案提示 ロ凍結資産活用もし

ワールド

トランプ政権、ニューオーリンズで不法移民取り締まり

ビジネス

米9月製造業生産は横ばい、輸入関税の影響で抑制続く

ワールド

イスラエル、新たに遺体受け取り ラファ検問所近く開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 9
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中