最新記事

コロナショック

海外からの観光客9月受け入れ断念 インドネシア・バリ、2021年再開へ

2020年8月25日(火)21時26分
大塚智彦(PanAsiaNews)

バリの浜辺に観光客が戻るのはいつか REUTERS/Johannes P. Christo

<コロナショックからの経済回復を急いだ知事の思惑は空回りして......>

インドネシアの世界的観光地であるバリ島のあるバリ州が、9月11日から州として独自に海外からの観光客を受け入れる方針を明らかにして、沈滞する地元観光業界などから大きな期待が寄せられていたが、バリ州政府は24日までに9月の受け入れ再開方針を撤回した。そして2020年一杯は受け入れを禁止することとして、ジョコ・ウィドド政権の方針と足並みをそろえて2021年初頭からの受け入れ再開を目指すことになったと発表した。

このバリ州政府の方針変更は、そもそもインドネシアの中央政府が2020年内の海外からの観光客受け入れ禁止方針を示す中で、観光業への依存度が高く、現状では州経済や観光関連業者への影響が致命的になるとして、「バリ島は特別扱い」を強調して独自に進めてきた方針だ。

それだけに9月11日からの海外観光客受け入れ方針を明らかにした時は「これで島に活気が戻る」「ようやく仕事が増える」と諸手を挙げて歓迎する意向を示した人々がいる一方で、「中央政府が禁じている海外からの観光客をバリ島だけが受け入れることなど果たして可能なのか。絵に描いた餅で終わるのではないか」と極めて冷静な見方をする人がいたのも事実である。

今回のバリ州政府の受け入れ年内禁止措置は、期待を寄せていた人々や業界を見事に裏切るとともに、懐疑的に見ていた人々に妙な納得感を与えている。

バリ州政府、特に先頭に立って「世界から観光客の受け入れを再開するのだ」と内外に広くアピールしていたワヤン・コステル州知事の責任は極めて重いといわざるを得ないとの見方がバリ島ではでている。

バリ観光復活3段階の最後で挫折

島内の主要産業が観光業とその関連というバリ島では、コロナウイルスの感染拡大に伴う移動制限、外出自粛、飲食業制限により内外からの観光客が激減したことで産業の約80%が何らかの影響を受けているという。

島内には長期滞在中の外国人、在住許可を所持している外国人をのぞき、以前は街中や観光地、海岸などにあふれていた外国人の姿はみられなくなった。

国内線航空機への搭乗制限に加えて首都ジャカルタなどの大都市部では「大規模社会制限(PSBB)」という外出・移動の制限、事務所・工場の営業・操業自粛、飲食店の店内飲食禁止などでインドネシア人生活も大きく制約を受ける時期が続いた。

そうしたなか、それでもバリ島は世界的な観光地であることを理由にインドネシアの他の都市とは異なる独自の観光産業復活方針を掲げた。

まず一時全面禁止されていた海岸や観光スポットを7月9日以降、地元バリの住民や島内に滞在している外国人などに解禁した。そして7月31日からはインドネシア国内からの観光客の受け入れに踏み切った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中