米中戦争を避けるため中国は成都総領事館を選んだ
成都の米総領事館 中国政府が閉鎖を命令 THOMAS PETER-REUTERS
ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を受けて、中国は27日、成都にあるアメリカ総領事館を閉鎖した。アメリカにダメージの大きい香港総領事館を選ばなかったのは、中国が米中戦争を避けているためだ。
アメリカによるヒューストンの中国総領事館に対する突然の閉鎖命令
アメリカ国務省は7月21日、中国政府がスパイ活動や知的財産の侵害を行っているとして、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館を72時間以内に閉鎖するよう命令した。それも、7月22日に中国ヒューストン総領事館が文書を燃やしているところが見つかり、火事の通告で消防署が駆けつけたために閉鎖命令が明るみに出ている。
ポンペオ国務長官は7月23日に演説し、世界各国と中国人民は「中国共産党の行動を変えるために共に闘おう」と呼び掛けた。
またポンペオは一歩進んで習近平(国家主席)を名指しで、「習主席は破綻した全体主義の信奉者で、長年の野望は中国共産党の世界制覇だ。中国共産党から自由を守ることは我々の使命だ」と述べている。
この演説を欧米のメディアは「新しい鉄のカーテン」と称している。
7月24日、ヒューストンの中国総領事館は完全に閉鎖された。
中国政府がアメリカ成都総領事館を閉鎖
中国外交部の汪文斌(おうぶんひん)報道官は、このような行為は絶対に許されるべきではなく中国は断固戦うと表明し、事実、中国政府は24日、四川省成都にあるアメリカ総領事館を72時間以内に閉鎖すると命令した。
その結果、7月27日に成都総領事館は閉鎖された。
外交部の汪文斌は「責任は全てアメリカ側にある。アメリカは直ちに誤りを正し、米中関係を正常な発展の軌道に戻すべく、アメリカは必要な環境、条件を作り出すべきだ」と反撃した。
中国はなぜ成都を選んだのか
中国にはアメリカの駐在機構として、北京にアメリカ大使館があるほか、上海、広州、武漢、成都、瀋陽および香港の計6ヵ所にアメリカ総領事館がある(現時点で成都なし)。
一方、中国のアメリカ駐在機構は、ワシントンD.C.にある中国大使館以外に、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ヒューストンの5ヵ所に中国総領事館がある(現時点でヒューストンなし)。
では、中国はなぜ成都を選んだのかを考えてみよう。
まず瀋陽は中国の東北部にあり、北朝鮮やロシアなどに近い。アメリカにとってある意味関心は高いだろうが、中国における重要度が低い。
武漢は新型コロナウイルス肺炎が流行し始めた時に、アメリカ総領事館のスタッフは大方が撤退し資料も大量に持ち出しているので、ここを封鎖してもアメリカには今さら大した影響をもたらさない。