最新記事

太陽

宇宙観測史上、最も近くで撮影された「驚異の」太陽画像

Closest Ever Images of the Sun Revealed by NASA and ESA, Scientists 'Amazed' at Quality

2020年7月17日(金)14時00分
アリストス・ジョージャウ(科学担当)

太陽に接近する探査機ソーラー・オービターのイメージ画像 SOLAR ORBITER ESA & NASA

<欧米共同開発の太陽探査機「ソーラー・オービター」は、これまで研究者を悩ませてきた太陽の様々な謎を解決できるか>

宇宙観測史上、最も太陽に接近して撮影した画像を、NASA(米航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)が初めて公開した。

NASAとESAが共同開発した太陽探査機「ソーラー・オービター」から送られてきたこの画像では、これまで撮影されたことがなかった太陽の表面上で発生している「キャンプファイア」という現象も捉えられている。

この現象は、小規模な太陽フレアで、なぜ太陽の表面よりも外側の太陽フレアの方が高温なのか、という長年、解明できていない謎を解く手掛かりになるかもしれない。

webs200717-solar02.jpg

太陽の表面上に細かいフレア「キャンプファイア」が発生しているのが見える SOLAR ORBITER ESA & NASA

「これまでで最も近い距離から撮影された画像で、太陽系中心部をめぐる我々の探索の最初の一歩となる」と、ESAの科学者ダニエル・ミュラーは本誌の取材に答えている。

「最終的には、太陽系の最も内側の惑星である水星よりも太陽に近づく。最大の驚きは、最初の画像のクオリティーの高さだ。さらにこのコロナ禍のなか、探査機に搭載した10の観測機器のすべてについて予定通りに初期テストと調整を終えることができたことも素晴らしい」

webs200717-solar03.jpg

画像上部の矢印で示されているのがキャンプファイアの1つ SOLAR ORBITER ESA & NASA

2018年にNASAが打ち上げた宇宙探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」も「ソーラー・オービター」より太陽に接近しているが、太陽を直接、撮影する望遠鏡を搭載していなかった。

キャンプファイアの画像は、極端紫外線撮像(EUI)と呼ばれる観測機器で今年5月30日に撮影された。この時、ソーラー・オービターは地球と太陽の間のちょうど半分くらい、太陽から約7700万キロの位置にまで接近していた。

「個々のキャンプファイア自体にはまったく大きな意義はないが、太陽全体で考えると太陽コロナを加熱させる主な要因になるのではないか」と、EUI担当のフレデリク・オシェアは声明で語っている。

webs200717-solar04.jpg

探査機に搭載された観測機器で捉えられた様々な太陽の表情 SOLAR ORBITER ESA & NASA

ミッションを通じて「ソーラー・オービター」は、太陽の未知の北極圏・南極圏の画像も送ってくる予定だ。ミュラーによると、それが太陽の磁場に関する貴重な考察を与えてくれるという。

また「ソーラー・オービター」は、太陽から放出される強力な放射線や太陽エネルギー粒子線が地球にどのような影響を及ぼしているか、そのしくみを解明するのに必要なデータを収集することになっている。これは地球の送電システムや通信網に障害が出る「宇宙嵐」の解明や予測に繋がるかもしれない。

<関連記事:宇宙の真理にまた一歩近づく、画期的なX線宇宙マップが初公開
<関連記事:火星の移住に必要な人数は何人だろうか? 数学モデルで算出される

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独メルセデス、安価モデルの米市場撤退検討との報道を

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官

ビジネス

午前の東京株式市場は小幅続伸、トランプ関税警戒し不

ワールド

ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中