最新記事

人種問題

後足で砂?英王室を離脱したヘンリー王子夫妻が大英帝国の過去を批判

Meghan Markle, Prince Harry Acknowledge Britain's 'Uncomfortable' Past

2020年7月7日(火)13時35分
ジャック・ロイストン

長男アーチー君の誕生を祝うヘンリー王子とメーガン妃。この時はまだ王室の一員だった(2019年5月)  Dominic Lipinski/REUTERS

<奴隷貿易や植民地主義の罪をまだ認めてもいないエリザベス女王をさしおいて、「イギリスは過去を認めるべき」と主張>

ヘンリー王子とメーガン妃は7月1日、英連邦の若者を支援する慈善団体「クイーンズ・コモンウェルス・トラスト」が主催したビデオ会議に参加。制度化された人種差別や無意識の偏見について話し、イギリスは「過去を認める」べきだとして、人種差別と大英帝国に関する「気まずい」問題を取り上げた。

アメリカで黒人男性が白人警察官に殺害されたことをきっかけに起こったBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大切)運動は、イギリスにも広がりを見せている。だがエリザベス女王はこれまでBLM運動について意見を表明したことも、かつての大英帝国が犯した罪について謝罪したこともない。英連邦の加盟国54カ国のほぼ全てが、かつて大英帝国の植民地だった。

ヘンリー王子はビデオ会議の中で、「英連邦全体を見渡したとき、私たちが過去を認めずに前に進む道はない」と主張。メーガン妃は「大きな出来事が起きた時だけではなく、平穏な時にこそ人種差別や無意識の偏見がひそかに助長されていく」と指摘し、「そうすると多くの人にとって、自分たちが能動的にも受動的にも差別の助長に一役買っていることが理解しにくくなる」と語った。

人種差別は「風土病のようだ」

彼女はさらにこう続けた。「私たちは今、少しばかり気まずい思いに耐えなければならない。その居心地の悪さを乗り越えて初めて、すべての人にとっていい世界が実現できるのだから」

英連邦の加盟各国で活躍する「若いリーダーたち」が参加したこのビデオ会議は、同トラストがBLM運動の広がりを受けて毎週行っているディスカッションの一環として開催された。同トラストは「世界中の若いリーダーを支持し、彼らに資金を提供し、また彼らを結びつけること」をモットーに掲げている。

メーガン妃は6月、母校であるロサンゼルスのイマキュレート・ハート高校の卒業生に向けたエモーショナルなスピーチの中で、BLM運動への支持を表明。ヘンリー王子は7月1日に出席した慈善団体のイベントで、制度化された人種差別は社会に「風土病のように」まん延していると批判していた。

しかし英連邦の首長であるエリザベス女王は、これまで大英帝国が犯した罪を公に認めたことはなく、奴隷貿易について謝罪したこともない。一方、女王の息子であるチャールズ皇太子は2018年にガーナを訪れた際に、奴隷貿易は「最悪の残虐行為」だったと認める発言を行った。

<参考記事>人種差別と偏見にまみれたイギリスから、ヘンリー王子とメーガン妃が逃げ出すのは当然
<参考記事>「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮のロシア産石油輸入量、国連の制限を超過 衛星

ワールド

COP29議長国、年間2500億ドルの先進国拠出を

ビジネス

米11月総合PMI2年半超ぶり高水準、次期政権の企

ビジネス

ECB幹部、EUの経済結束呼びかけ 「対トランプ」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中