最新記事

感染症対策

ロンドンの会社員、職場へは自転車それとも船にスイッチ? 通勤距離が大きな課題に

2020年6月15日(月)17時21分

英ロンドンの通勤風景の混雑状況は多くの人々にとって悩みの種となっているが、新型コロナウイルスに伴うロックダウンの解除後には通勤手段がより大きな課題になる見通しだ。写真はロンドンの地下鉄で3月撮影(2020年 ロイター/Hannah McKay)

英ロンドンの通勤風景の混雑状況は多くの人々にとって悩みの種となっているが、新型コロナウイルスに伴うロックダウン(都市封鎖)の解除後には通勤手段がより大きな課題になる見通しだ。

列車やロンドン地下鉄、バスでの混雑緩和に向けた社会的距離ルールにより、ロンドンの輸送ネットワークの能力は85%減少した。今では公共交通機関を利用する人はフェイスカバーを着用する必要がある。

ロックダウン制限が徐々に緩和される中、多くの人々はシティ・オブ・ロンドンといったビジネス街にいかに早く安全にたどり着くかという問題に直面している。

ロンドン市長のコミッショナー(ウォーキング・サイクリング担当)、ウィル・ノーマン氏は「新型コロナ危機は市周辺の移動方法や輸送機関の運営方法について根本的に再考せざるを得ない状況にわれわれを追い込んでいる」と述べた。

新型コロナ流行前には、1日当たり最大500万人がロンドン地下鉄を利用し、100万人が列車で通っていた。ロックダウン期間中の在宅勤務がうまくいったことから、一部の人々は全ての制限が解除された後も在宅勤務を続ける可能性がある。その他の人々は別の通勤方法を検討することになるだろう。

自転車販売急増

ロンドン当局はサイクリストや歩行者向けの新ルートを増やした。自転車の販売が急増しているほか、ボート運航業者は市内を流れるテムズ川でのサービス強化を検討している。

市内南部のサイクルショップ、ブリクストン・サイクルのテリー・グリーン氏によると、3月と4月の自転車販売は昨年に比べ3倍になったという。

ただ、グレーター・ロンドンは香港やニューヨークといった金融センターよりも広く、その他多くの都市に比べ自転車利用に適していないとみられている。

ロンドン交通局によると、新型コロナ流行前のロンドンにおける移動に占める自転車の割合はわずか2.5%に過ぎない。多くの人にとって距離が問題だ。2015年のデータによると、ロンドンで働く人々の毎日の通勤距離は平均18キロだった。

慈善団体ロンドンサイクリングキャンペーンのサイモン・ムンク氏は「自宅から勤務先に快適に自転車通勤ができるようにするため」ロンドン周辺に達する大規模な自転車道路ネットワークを求めている。

一方、オックスフォード大学のティム・シュワネン教授(交通研究・地理学)は、ロンドン中心部の生活コストの高さは賃金の比較的低い多くの労働者がより遠方に住んでいることを意味し、自転車通勤は難しいと指摘。「多くの人々の通勤形態を変えるのに良いインフラだけでは不十分だ」と述べた。

(Sarah Young記者、Paul Sandle記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染47人 40日ぶりで40人超え
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・北京市、約2カ月ぶりの新型コロナ感染で警戒 食品卸売市場を閉鎖
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...


20200623issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月23日号(6月16日発売)は「コロナ時代の個人情報」特集。各国で採用が進む「スマホで接触追跡・感染監視」システムの是非。第2波を防ぐため、プライバシーは諦めるべきなのか。コロナ危機はまだ終わっていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU・仏・独が米国非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中