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ジョージ・フロイド暴行死に憤る白人層 アメリカ社会は変われるか

2020年6月15日(月)11時49分

米首都ワシントンで6日、フロイドさんの暴行死を受けた抗議デモに参加する人々(2020年 ロイター/Erin Scott)

米メリーランド州に住む白人で事務系管理職のレスリー・バストンさん(42)は先週末に首都ワシントンで、白人警官の暴行のため黒人男性ジョージ・フロイドさんが亡くなった事件に抗議する数千人規模のデモ行進に参加した。一緒に参加した9歳と11歳の子供たちが、我が家はなぜ何もしないのかと尋ねたからだという。

バストンさんは6日、「非白人で社会の現状から恩恵を受けられない人たちの発言力を高めるのを助けようという、私なりの取り組みだ」と話した。

実際最近になって、全米各地の都市や小さな町で、白人が「黒人の命は大切」と書かれたTシャツを身に着け、手製のプラカードを掲げながら「手を上げるんだ。撃つな」と叫んで練り歩いている。時には、フロイドさんが警官に首を押さえ込まれ呼吸ができずに苦しんだことを悼み、皆で路上に横たわる場面も見られる。

書店では「白人の脆弱さ」「新たなジム・クロウ法(かつて南部諸州にあった人種差別的な州法の総称)」といったタイトルの書籍がベストセラーに名を連ね、ソーシャルメディアでは連日、「黒人の命は大切」のハッシュタグの投稿が続く。

圧倒的な割合で白人が経営、所有するフォーチュン500企業(全米上位500社)やスポーツチームも、人種差別反対運動への支持を表明した。ニューヨーク証券取引所(NYSE)はフロイドさんのために過去最長の黙とうを行った。

米国の公民権運動への白人の参加は昔から見られたが、歴史学者や社会学者は、足元で広がる反人種差別への支持のうねりが、かつてないほど大きいということには同意する。

それでも白人たちが、人種差別との闘いに長期にわたって関与し続けるつもりなのかどうか、疑問を投げ掛ける専門家も多い。

ローズ大学の歴史学准教授チャールズ・マッキニー氏は「歴史を振り返ると、今年のようにさまざまな運動で白人の参加率が高まっても、抗議デモが沈静化していくと白人は運動から徐々に脱落していく」と話す。

かつての黒人公民権運動では、1965年にアラバマ州セルマで「血の日曜日事件」(デモ隊が警官隊に弾圧され死傷者を出した事件)が起きた際にピュー研究所が行った調査によると、デモ隊に共感する割合は、全米規模では州内の2倍に上っていた。

ところが当時の別の調査では、デモ隊が求めた黒人の参政権獲得や人種差別措置の撤廃について、ジョンソン政権の進め方が急過ぎると考える国民も、45%に達していた。

マッキニー氏は、今年の白人層の動きが「黒人の命は大切」運動を現実的に後押しするような法整備につながるかを分析中だ。

人権団体の連合組織幹部を務める元外交官のアリン・ブルックス・ラシュア氏は、フロイドさんの事件を限りにして人種間の分断を終わらせるには、白人側が単に傍観者的な立場から同情するのでなく、この問題を全面的に自分たちの責任として引き受ける必要があると訴えた。

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