コロナ禍で疲弊したインド農家を、非情なバッタの大群が襲う
LOCUSTS PLAGUE INDIA
昨年からのインドでのバッタの発生は、専門家によれば1993年以来最もひどいものだ。ナレンドラ・シン・トーマー農業・農民福祉相の議会での発言によると、この1年間で国内の農地約16万8600ヘクタールの88%がバッタに襲われ、被害地域では作物の3分の1以上が失われている。
パキスタンの砂漠地帯と国境を接する西部のグジャラート州とラジャスタン州の農業地帯は、とりわけバッタに弱い。昨年夏にもパキスタンから食欲旺盛な黄色い群れが押し寄せ、ラジャスタン州西部とグジャラート州北部でラビ作(乾期作)の作物に壊滅的な被害を与えた。両州当局はトラクターで殺虫剤を噴霧するなどして、被害を受けた43万ヘクタール以上の農地の対応に当たった。
砂漠地帯のラジャスタン州の状況は、特に4月から深刻だ。気象の専門家によると、バッタは砂嵐が起こると、それに運ばれて余計に速く移動できる。国内で最も人口が多いウッタルプラデシュ州のサトウキビ畑も、すさまじい被害を受けている。
これから芽が出る綿花や野菜、4月にまいた飼料用穀物について、農家の心配は募る一方だ。「もうじき種をまくキビやムングダール(緑豆)の柔らかい芽も被害に遭うのではないか」と、ラジャスタン州ジャイサルメールで農業を営むラム・プラサドは不安げに語った。
彼のような小規模農家にできるのは、皿をたたいたり、火をともしたりしてバッタを追い払おうとすることくらいだ。ラジャスタン州議会ではメディアの注目を集めようとして、バッタを山盛りにした籠を頭に載せて議場に入った議員もいる。
ラジャスタン州のアショク・ゲロット首相は5月14日、中央政府にバッタ被害への支援を求めた。その際にゲロットは、モディに昨年のバッタ被害の大きさを思い出させることを忘れなかった。
昨年冬にはモディの故郷であるグジャラート州で、バッタが2万5000ヘクタールに及ぶ畑を食い荒らしていた。中央政府と州は協力して、被害を受けた農家に薬品や支援物資を届けた。
気候変動が影響している?
全国各地での被害を受けて、インド政府はドローンなど各種設備に投資を進めるほか、国内外の専門家に助言を求めるなどの対策を講じている。「害虫の移動経路をドローンで追跡したり、繁殖を食い止めるために殺虫剤を空中散布したりしている」と、農業省の高官は言う。
この高官によれば、被害地域の農家に注意を喚起する目的でキャンペーンも展開してきた。害虫予防策が書かれたパンフレットやステッカーが配布され、ビルや倉庫の壁には用心を促すメッセージが並んでいる。