最新記事

デモ

米・黒人暴行死への抗議、世界に拡大 欧州・アフリカで

2020年6月3日(水)08時43分

米ミネソタ州で発生した白人警官の暴行による黒人男性死亡事件を受けた抗議活動が全米に広がる中、欧州やアフリカなど世界各地でも人種差別に抗議する集会が開かれた。写真はアムステルダムでの1日に行われたデモ(2019年 ロイター/EVA PLEVIER)

米中西部ミネソタ州で発生した白人警官の暴行による黒人男性死亡事件を受けた抗議活動が全米に広がる中、欧州やアフリカなど世界各地でも「黒人の命は大切だ(Black Lives Matter)」のスローガンを掲げ、人種差別に抗議する集会が開かれた。

こうした平和的な集会では、社会、経済的な格差のほか、過去の欧州列強による植民地化時代からまとわりつく人種主義などがクローズアップされ、オランダの首都アムステルダムで開かれた集会ではブラック・ヘリテージ・アムステルダム・ツアーズの創業者、ジェニファー・トッシュさんが「オランダには人種問題はないと考える人はここにいるべきではない」と述べた。

英国の首都ロンドンでは「英国も無実ではない」とのプラカードを掲げた人が行進。ドイツの首都ベルリンでは米国大使館の前で約2000人が抗議活動を行った。

一連の抗議活動の発端になったのは、米中西部ミネソタ州のミネアポリス近郊で5月25日、白人警官が黒人のジョージ・フロイドさんを逮捕する際に膝で首を地面に押し付け、フロイドさんがその後死亡した事件。ベルリンでは1日、プロサッカー選手2人が「ジョージ・フロイドさんに正義を」と書かれたTシャツを着て抗議活動に参加した。

フランスの首都パリでは1日、米国大使館の前で小規模な抗議活動が行われた。活動参加者は、新型コロナウイルス感染拡大抑制策が実施される中、アフリカ諸国出身の住民が多い低所得地域で警察による横暴な事件が散見されたと指摘している。仏警察当局は2日、2016年に警察に逮捕され、拘束中に死亡した黒人男性を巡る追悼デモを禁止すると発表。米国の抗議活動の飛び火を警戒した可能性がある。

欧州外では、トルコのイスタンブールでフロイドさんの事件を巡る抗議活動開始直後に約50人の活動参加者が警官隊と衝突。少なくとも5人が身柄を拘束された。

ケニアの首都ナイロビでは、米国大使館前で「黒人の命は大切だ」「超法規的な殺人はやめろ」などと書かれたプラカードを掲げて抗議活動を実施。抗議活動を取りまとめたナフラ・ワフラさんは、黒人に対する暴力は国際的なものとし、「警察による暴力はケニアでは社会階級に起因しているが、米国では人種と階級の双方に起因している」と述べた。

こうした抗議活動は今後、ガンビアのほか、欧州ではスペインやポルトガルなどでも計画されている。

一方、スペインの極右政党ボックス(Vox)や、反イスラムを掲げるオランダの自由党などは、フロイドさん死亡事件に抗議する人々を「テロリスト」と呼び、トランプ米大統領が示している姿勢に支持を表明。分断が広がっている。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20200609issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け不安定な展開

ワールド

英、パレスチナ国家承認へ トランプ氏の訪英後の今週

ビジネス

NY外為市場=ドル下落後切り返す、FOMC受け荒い

ビジネス

FRB0.25%利下げ、6会合ぶり 雇用にらみ年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中