最新記事

医療

「緊急事態解除の日」遠い医療現場 他院が拒否した新型コロナ患者受け入れる聖マリアンナ病院の葛藤

2020年5月23日(土)14時31分

「我々が逃げたら、誰がやるのか」

4000人近い乗客を乗せて横浜港に停泊中、集団感染を起こしたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。その患者を率先して受け入れたのは聖マリアンナ病院だった。以来3カ月、同船を下船した乗客も含め、同病院は新型コロナ患者を積極的に治療してきた。特にICU(集中治療室)に収容した重症者と中症者の数は、国内の病院では最多規模の約40人に達している。

緊急を要する重症者は駐車場に設置したテントで気管挿管することもある。容体次第では、透明ビニールに囲まれた手術室に運び、気管切開を行う。ICUの中では、防護服に身を包んだ看護師が6人1組となり、何本ものチューブで様々な救命器具につながれた患者の姿勢を変える作業に当たる。

疫病を防ぐとされる日本神話の妖怪「アマビエ」のイラストが貼られた院内では、日夜を問わず、新たな感染症と戦う緊張とあわただしさが交錯していた。

センター内の廊下と病室は緑、黄色、赤に色分けされている。人の流れと感染リスクをコントロールするためだ。

一般のマスクで立ち入り可能な「緑ゾーン」、検査結果が出ていない患者の病室などがある「黄色ゾーン」、重症患者を収容し、宇宙飛行士のような防護服と電動ファンがついた特別の呼吸器を装着する必要がある「赤ゾーン」。医療スタッフはそれぞれのゾーン担当を交代しながら勤務にあたる。

だが、異常事態に慣れた医療スタッフばかりの同センターでも、当初、新型コロナウイルスの患者を積極的に受け入れようと説得するのは容易なことではなかった。

「救命センターで全部やるぞって言ったら、看護師も医者も、なぜウチだけがやらなければいけないのか、と言い出した」と、同病院の平泰彦・特任教授(救急医学)は話す。同氏は常に「他に行き場のないコロナウイルス患者を引き取る義務がある」と念を押していたという。

このコロナウイルスの特別な危険性を考えれば、スタッフが及び腰だったのは無理もなかったと平教授は言う。

「(コロナ)にかかる確率は高い。だけど医者になった以上、仕方がない」。そして、スタッフにはこう付け加えた。「自分たちが逃げだしたら、一体誰がやるんだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、足元はマイナス圏 主力株

ワールド

UAE・イラク企業連合、7億ドル規模の次世代データ

ワールド

イスラエル、25年GDPは3.1%増 戦後経済はさ

ビジネス

米ハイアット会長が辞任、エプスタイン氏との交友「判
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したスーツドレスの「開放的すぎる」着こなしとは?
  • 2
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 10
    アメリカが警告を発する「チクングニアウイルス」と…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中