最新記事

ライフスタイル

世界49カ国調査 9割以上が「体調不良でも出勤」していた 

2020年5月25日(月)18時00分
松岡由希子

「風邪気味だけど出社」は、日本人だけじゃなかった...... Cecilie_Arcurs-iStock

<オーストラリア国立大学(ANU)の研究チームは、49カ国を対象に、2018年10月から2019年1月に、体調と出勤状態をアンケート調査した結果をまとめた>

世界49カ国を対象とした国際的なアンケート調査によると、回答者の9割以上が、インフルエンザが疑われる軽い症状がありながら出勤した経験を持つことが明らかとなった。

医療従事者の6割は、発熱や悪寒、頭痛でも出勤

オーストラリア国立大学(ANU)の研究チームは、欧米、アジア、アフリカの49カ国533名を対象に、2018年10月から2019年1月にかけて無記名によるウェブサイトでのアンケート調査を実施し、2020年5月13日、その結果をまとめた研究論文をオープンアクセスジャーナル「プロスワン」で発表した。

アンケート調査の回答者のうち、46.7%にあたる249名が医療従事者で、53.2%が非医療従事者であった。医療従事者の99.2%、非医療従事者の96.5%が「喉の痛みや咳、くしゃみ、鼻づまり、倦怠感、食欲不振など、インフルエンザの軽い症状があっても出勤した」と回答。医療従事者の58.5%は、発熱や悪寒、頭痛、筋肉痛など、インフルエンザの主な症状が出ても、出勤し続けたという。

研究論文の共同著者であるオーストラリア国立大学のピーター・コリニョン教授は、「この調査結果は、医療の最前線に立つ医療従事者を含め、非常に多くの人々が病気になっても出勤していることを示している」とし、「これは、コロナウイルス感染拡大前であってもけして好ましいことではない。当然ながら、コロナウイルスの感染が世界的に拡大する現在においては、体調が悪いときは出勤しないことがより重要だ」と説いている。

体調不良のときは出勤しないことこそ、万人のためになる

研究論文では、その背景として、職場の風土や個人の意識はもとより、人手不足、有給の病気休暇制度の不備など、様々な要因によって、体調不良でも出勤する「プレゼンティズム(疾病就業)」が促されていると指摘している。

とりわけ医療従事者は、インフルエンザの症状がありながら勤務を続けることで、同僚や患者に感染を広げてしまうおそれがあるのみならず、疲労に伴う判断力の低下などによって医療過誤を引き起こすリスクも高まる。コリニョン教授は「医師や看護師は『他者を助けるために出勤しなければならない』と感じているのかもしれないが、体調不良のときは出勤しないことこそ、万人のためになる」と呼びかけている。

医療従事者が体調不良でも勤務を続けていることは、米国の医療従事者を対象としたアンケート調査でも示されている。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2014年から2015年までのインフルエンザ流行期に米国の医療従事者1914名に実施したアンケート調査では、インフルエンザに罹患した医療従事者のうち41.4%が「インフルエンザに罹りながらも勤務を続けた」と回答している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、歳出法案を再度非難 支持する議員は議席失

ビジネス

インタビュー:戦略投資、次期中計で倍増6000億円

ワールド

トランプ氏、イスラエル首相と来週会談 ホワイトハウ

ビジネス

ロビンフッド、EU利用者が米国株を取引できるトーク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 6
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 10
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中