最新記事

感染症対策

軽症者自宅待機の危険性、アメリカ医師会論文が警鐘

2020年4月24日(金)19時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

4.第4段階(Centralized treatment and quarantine strategies for 4 categories of people)

この期間は2月2日から16日までで、集中的な隔離と治療を伴う対策が強化実行された。感染者のカテゴリーは以下の4つに分類された。これに関しては3月26日のコラム<中国の無症状感染者に対する扱い>に詳述したが、論文の分類と多少異なる。より詳細な分類はコラムの方を参照して頂きたい。以下は論文に従う。

   ●確定患者

   ●推定患者

   ●熱と呼吸症状のある患者

   ●濃厚接触者

2月2日には、医療資源の改善に伴い、陽性確定者・推定者、発熱・呼吸器症状のある者、確定者の近親者を指定の病院や施設に隔離して治療する集中検疫政策が実施された。

何よりも重要なのは、この時期から「軽症者を施設に隔離し、観察・治療を行ったこと」と「無症状感染者の施設隔離観察」が徹底されたことである。

その結果、第4段階から急激に感染者数が減少し始めている。

5.第5段階(Universal symptom survey)

期間は2月17日から3月8日まで。政府は数千人のコミュニティワーカーの支援のもと、武漢全住民(隔離されていない一般市民)を対象に戸別・個人別の症状スクリーニングを開始した。そのため2月17日に感染者の増加が見られる。全住民に対する無差別抽出(統計的に有効性のあるランダムサンプリング)によって調査したため、その結果が感染者数の増加に現れている。

しかし、それは逆に感染者の減少に貢献し、3月に入ってからの劇的減少につながった。

以上、論文は「軽症者を隔離させることがいかに重要であるか」を強調している。

イギリスのテレグラフ紙「隔離だ、隔離だ、そして隔離だ」

この論文を受けて、4月20日のイギリスのテレグラフ紙はGlobal Health Security(公衆衛生セキュリティ) Science & Disease(科学&疾病)面で"Isolate, isolate, isolate: China's approach to Covid-19 quarantine could be the most effective"(隔離だ、隔離だ、そして隔離だ:中国のコロナ隔離へのアプローチが最も有効的だ)という報道を載せている。

報道では上記のJAMA論文を基にしながら「武漢は初期段階において軽症患者を自宅待機するようにしていたが、それでは効果がなく、感染を蔓延させていた。しかし臨時病院という隔離施設を作って軽症患者を隔離してから、感染が急落した」としている。

日本は何と言っても経済再生担当大臣をコロナ対策の司令塔に任命するという状況なので、人命は二の次になっている。政府のお金を出し惜しんで、「休業補償」も全国的に制度化することもなく、これまでは、「軽症者の隔離治療」や「無症状感染者の隔離」に国家予算を注ぐ方針も取らなかった。

自宅待機を余儀なくされた軽症者から死亡者が出たことにより、ようやく全国的な措置の方向に動き始めてはいるが、それも緊急に徹底させるという感じではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中