最新記事

感染症対策

軽症者自宅待機の危険性、アメリカ医師会論文が警鐘

2020年4月24日(金)19時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

軽症者を集中的に隔離・治療した武漢の臨時病院(既に役目を終え閉鎖) China Daily/REUTERS

日本でも自宅待機軽症患者の死亡が報道されたが、アメリカ医師会雑誌には軽症者を隔離しないと感染拡大は止まらないという論文が発表された。日本も緊急に軽症患者の隔離を進めるべきだ。

JAMA「アメリカ医師会雑誌」、武漢を例に分析

今年4月10日のAmerican Medical Association(AMA=アメリカ医師会)がウェブサイトで出版している学術誌JAMAは、"Association of Public Health Interventions With the Epidemiology of the COVID-19 Outbreak in Wuhan, China"(中国武漢におけるCOVID-19 のアウトブレイク疫学に対する公衆衛生的介入による関連性)という論文(以下、論文)を掲載した。

論文の作者は武漢にある華中科技大学やアメリカのハーバード大学の研究者(博士)など5名である。

論文は、武漢における新型コロナウイルス肺炎(COVID-19 )(以下コロナ)の患者に対する各時期の処置と効果の相関関係を分析している。

分析対象としたのは感染爆発を起こしたあとにコロナから脱却した中国湖北省武漢市における軽症者の扱いと感染減衰との相関である。

結論を先に言えば、武漢市も初期の間は軽症者に対する隔離治療を行っていなかったのだが、そのままでは感染拡大が収まらなかった。そこで軽症者を隔離病棟に入院させると、感染者数が「急激に」減少し始めたという分析である。

軽症者を隔離治療させなければならないと強調したのは、中国の伝染病学や免疫学の権威である鍾南山院士だ。3月18日のコラム<中国はなぜコロナ大拡散から抜け出せたのか?>に書いたように、鍾南山は「軽症者が自宅にいて家族に感染させたり、全く外出しないというわけにはいかないので周辺住民にも感染が広がったり、何よりも軽症者が突然重症化するケースがあるからだ」と何度も言っている。

軽症者が突然重症化することに関しては、鍾南山は別のコメントで何度も警鐘を鳴らしている。それは現場における経験からの警鐘だった。

その忠告により軽症者をも方艙(ほうそう)医院(急遽建てた臨時病院)などに隔離して医者の観察を続けることにした。

論文は、その論理的根拠に対して数量的分析をしたものだと位置づけることができる。

これは、現在の日本における軽症感染者の措置に関して、非常に有効な判断基準の一つとなり得るので、以下に詳細にご紹介することとする。

感染拡大プロセスを5段階に分けると見えてくる軽症者の扱いの重要性

日本では、ともかく重症者を最優先というベッドの奪い合いをしているが、もちろん重症者を優先するのは重要であるとしても、国家の方針としては、本気で感染拡大を抑えようと思うのなら、軽症者の扱いが、その国にとっての分岐点になることが見えてくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国「米の独断専行に最後まで付き合う」、関税引き上

ビジネス

焦点:米大統領はどこまで株安許容か、なお残る「トラ

ビジネス

中国人民元基準値、23年以来の元安水準に設定

ビジネス

英住宅価格、3月は前月比-0.5% 減税終了で需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 9
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中