最新記事

スウェーデン

「ストックホルムは5月には集団免疫を獲得できる」スウェーデンの専門家の見解

2020年4月21日(火)18時30分
松岡由希子

ロックダウンによらない独自の戦略をとるスウェーデンの行方が注目される Anders Wiklund/TT News Agency/via REUTERS

<スウェーデン国内の専門家から「5月には、首都ストックホルムで新型コロナウイルスへの集団免疫を獲得する可能性がある」との見解が示された......>

人口約1033万人の北欧スウェーデンでは、都市封鎖(ロックダウン)によらない独自の戦略により、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑制しようと取り組んでいる。そしてこのほど、スウェーデン国内の専門家から「5月には、首都ストックホルムで新型コロナウイルスへの集団免疫を獲得する可能性がある」との見解が示された。

ストックホルム在住者のうち、約2.5%が感染と推定

スウェーデン公衆衛生局の疫学者アンダース・テグネル博士は、ノルウェー放送協会(NRK)の取材に対して、「スウェーデン公衆衛生局の数理モデルによると、ストックホルムでは多くの住民が新型コロナウイルスへの免疫を獲得しつつあり、新型コロナウイルス感染症の流行の抑制に効果をもたらしはじめている」と述べた。

4月6日から12日までの週間レポートによると、ストックホルムでは、陽性率(新型コロナウイルスの感染を調べる検査で陽性と判定された人の割合)が前週前週の35%から14%に低下しており、スウェーデン公衆衛生局は、新型コロナウイルス感染症の流行が抑制されている徴候ではないかとみている。

スウェーデン公衆衛生局では、国民のうち、どれくらいの人が新型コロナウイルスにすでに感染したかを推計するためのサンプル調査に着手している。3月27日から4月3日には、ストックホルムに在住する2歳から86歳までの738名を対象にサンプル調査を実施し、18名が陽性と判定された。

これにより、ストックホルム在住者のうち、上気道に新型コロナウイルスを保有している人の割合は約2.5%と推定される。スウェーデン公衆衛生局は、4月21日から24日にかけて、スウェーデン全土で約4000名を対象に、同様のサンプル調査を行う計画だ。

学者グループは、より強制力の高い措置を求めているが

スウェーデンでは、政府と国民との強い信頼関係のもと、政府が国民の生命と健康、雇用を守るために必要な政策を適切に実行する義務を負う一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大抑制に向けて国民が主体的に責任を果たすよう求めている。

3月17日以降、高校・大学を休校としているほか、50名以上の集会禁止、不要不急の旅行の禁止、70歳以上の高齢者の公共交通機関の利用禁止、小売店やショッピングモールへの入店者数の制限といった措置を講じているものの、英国やフランス、イタリアなど、他の欧州諸国が実施している都市封鎖と比べれば緩やかなものにとどまっている。

スウェーデンでは、4月20日時点の感染者数が1万4385名で、死亡者数は1540名となっている。人口100万人あたりの死亡者数は149人で、隣国のデンマークやノルウェーに比べてその割合は高い。

スウェーデン政府の一連の対策については、スウェーデン国内でも議論されており、ストックホルムの国立医科大学「カロリンスカ研究所」を中心とする約2300名の学者グループは、より強制力の高い措置を講じることを求める公開書簡をスウェーデン政府に送付している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中