最新記事

感染症対策

中国「新型コロナウイルス対策」積極輸出 新たな外交カードに

2020年4月21日(火)14時41分

中国の専門家を信頼

カンボジアに前月派遣された中国医療チームの一員によると、チームは受け入れ国で臨時病院の建設や、症状の軽い人々の隔離、公共の場に入る人々の検温を幅広く実施することなどを助言している。中国は湖北省武漢で、病床1000床の病院を8日間で建設した。

中国の助言に従い、セルビアは軽症者の隔離を開始し、そうした患者を収容する病院の建設を軍の動員によって行っている。同国高官らによると、こうした措置で感染拡大のスピードを抑える効果が出ているという。

大統領府に近い人物は「中国の医師らは、セルビアが中国をモデルにした措置を採用したことを歓迎してくれた。できる限り多くの感染者を把握して治療するというモデルだ」と述べた。

東南アジア諸国の中で歴史的に中国政府寄りなカンボジアでは、中国チームの助言を受けて海外からの渡航者向けのビザ(査証)発給を大幅に削減。中国チームの一員によると、カンボジアはホテルや学校を改修して帰国者向けの隔離施設とする助言についても、実行に移すことを検討中だ。

ありがとう、習兄弟

こうした医療支援にもかかわらず、中国は米国その他の国々から、感染拡大の初期に情報を出さず、リスクの大きさを否定したとして非難を浴びている。

米ブルッキングス研究所のライアン・ハス氏は「中国の初動ミスがウイルスの世界的感染拡大につながったことを、多くの国々がすぐに忘れるとは思えない」と言う。

ただ、セルビアのような国々の反応は、今のところ好意的だ。

中国チームはベオグラードで、1999年の米軍機による中国大使館誤爆で犠牲になった人々を弔う記念碑を訪れた。

チームの到着後、ベルグラード中心部に掲げられたプラカードには習近平・中国国家主席の写真の横に、中国語とセルビア後で「ありがとう、習兄弟」と大書されている。

(Keith Zhai記者 Aleksandar Vasovic記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・コロナ抗議デモ拡大、トランプが反抗をけしかけ「ミシガンを解放せよ」
・米カリフォルニア州で新型コロナウイルス抗体検査 感染者、公式統計の40倍の可能性
・コロナの余波「食品値上がり」──世界的な買いだめと売り惜しみの悪循環
・夏には感染は終息する、と考えていいのか?


20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機

ビジネス

再送米経済「対応困難な均衡状態」、今後の指標に方向

ビジネス

再送MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中