最新記事

韓国

韓国、選挙でもドライブスルーやフェイスシールド 新型コロナウイルスと闘いつつの国会議員選挙 

2020年4月10日(金)10時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

newsweek_20200410_022956.jpg

仁川のジャンヌ・ダルク? 馬にまたがり選挙運動をするイ・ヘンスク氏 인투티비 / YouTube

SNSでシェアされる話題を作れ!

若者層攻略と名前の拡散には、SNSの有効利用が鍵となる。若者が思わずスマートフォンで写真を撮って自分のSNSにアップしたくなるようなアピール方法を実行する候補者が増えている。

仁川西区の候補者イ・ヘンスク氏は、今月2日ジャンヌ・ダルクを彷彿とさせるような甲冑姿で馬に乗って道路に現れた。騎馬行進をしながら沿道の有権者らに手を振る姿は、この日多くの人たちがSNSにアップしている。

また、子供たちの人気者ティラノサウルス軍団を引き連れて街頭演説に現れたのは全羅南道麗水市の候補者のイ・ヨンジュ氏だ。恐竜は公約に全く無関係だが、イ氏の名前に龍の漢字が入っているため、この作戦を思いついたのだと言う。その他にも、光州候補者イム・ジョンソン氏は、となりのトトロの猫バスならぬ、かわいい犬乗用車で選挙活動を実施し、どこに行っても注目の的だ。

最先端のハイテク技術を取り入れた候補者もいる。京畿道鳥山市の候補者アン・ミンソク氏は、ARと呼ばれる拡張現実を組み合わせた選挙活動を行い話題だ。事前にダウンロードしたアプリを開き、アン候補者の広報パンフレットのページをスマホ越しに見ると、アン氏本人が飛び出して公約を説明してくれるような映像が見られる。今の若者層には、選挙カーからマイクで名前を連呼されるよりも、スマートフォンを通じたアピールの方が親しみがわくのかもしれない。

コロナの感染予防しながらの選挙運動

newsweek_20200410_102823.jpg

感染防ぐ「ドライブスルー」方式を採用したソ・ピルサン氏の選挙活動。 서필상 / YouTube

今回の選挙活動で多くの候補者の頭を悩ませているのがコロナ拡散防止策だ。お辞儀社会の日本とは違い、韓国は握手社会だが、有権者との挨拶に握手することは規制されている。手を握り合わずに挨拶するグータッチや肘を合わせる候補者も多く見かけられた。

また、名前と顔を一致させることも票を得る大事な要素だが、感染予防でマスクを着用しているため、顔の半分は隠れたままだ。そこで、顔全体が見えるようにフェイスシールドと呼ばれる透明なプラスティックで顔全体をガードする医療用具を使用する候補者や、あえて目立つような原色のマスクに、名前を大きく印刷したものを付ける候補者など逆境を工夫し乗り切っているようだ。

一方では、コロナの対策活動に積極的に参加する姿をアピールしている候補者も多い。

感染検査で韓国のドライブスルー方式が世界的に話題になったが、選挙運動でもドライブスルー方式を使う候補者も登場した。慶尚南道の候補者ソ・ピルサン氏は、一般的に30分から1時間同じ場所に留まって行われる街頭演説を、2、3分止まって車内から行うドライブスルー街頭演説方式を実践している。

また、ソウル市の候補者ソン・ハンソプ氏は、医者の経歴を活用しコロナの医療ボランティアに参加した。この活動を有権者にアピールするためSNSにアップされた映像には、防護服に着替えるところから、積極的に医療奉仕活動するソン氏の姿が映っている。

公約や政策に少しでも耳を傾けてもらうためにも、インパクトのある選挙活動は有効かもしれない。しかし、この選挙はパフォーマーのオーディションをしているわけではない。一番大事なのは、当選後国民のためにしっかりと仕事をしてくれる議員を選ぶことだ。候補者も有権者もそのことをしっかりと忘れずにいて欲しい。


【関連記事】
・気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること
・中国製コロナ検査キット使い物にならず、イギリス政府が返金を要求へ
・NY州の新型コロナウイルス死者最多に、感染者13.8万でイタリア超え 安定化兆しも


20200414issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月14日号(4月7日発売)は「ルポ五輪延期」特集。IOC、日本政府、東京都の「権謀術数と打算」を追う。PLUS 陸上サニブラウンの本音/デーブ・スペクター五輪斬り/「五輪特需景気」消滅?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領と中国外相が会談、王氏「中ロ関係は拡

ワールド

米下院2補選、共和が勝利へ フロリダ州

ワールド

ロシア製造業PMI、3月は48.2 約3年ぶり大幅

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中