新型コロナ、見えない先行き──どうなれば「小康状態」や「終息」といえるのか?
感染拡大を小康状態に持ち込むことが当面の目標 peterhowell-iStock
<新型コロナウイルス感染が「小康状態」や「終息」と呼べるようになる条件は>
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年4月1日付)からの転載です。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、世界保健機関(WHO)は、3月11日、「パンデミック(世界的な大流行)」を宣言した。これにより、世界各国で国境封鎖や感染地域からの入国制限、都市封鎖(ロックダウン)などの措置が取られている。今年予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの開催日程は、1年延期(それぞれ2021年7月23日開幕・8月8日閉幕、8月24日開幕・9月5日閉幕)となることが決まった。3月31日現在、世界全体で感染者は75万0890人、死亡者は3万6405人。日本では、感染者は2665人、死亡者は63人(横浜港に停留したクルーズ船を含む)に達している。[WHO' Situation Report-71 '(2020.3.31)より]
日本でも、集団感染を避けるために、小中高校の臨時休校や在宅勤務、外出自粛などの拡大防止策が取られている。政府は、換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面、の3つの「密」を避けるよう、注意を促している。こうした措置によって感染拡大のペースは落ち着くのか。そして、どうなれば小康状態に至り、終息宣言が出せるのか。少し考えてみたい。
集団感染を防ぐカギは「潜在的な感染者」
現在の拡大防止策は、集団感染を防ぐことを重視している。感染のピーク時の患者の発生を、病床数や医師・看護師の数などのキャパシティ以下に抑えることと、ピークの到来を先送りして医療体制を整備したり、医薬品を開発したりする時間を確保する狙いがあるといわれている。
これは、発症して医療施設で受診する患者以外にも、潜在的な感染者がいることを想定したものだ。潜在的な感染者には、感染したが発症前の人(発症前感染者)、症状が出ない人(不顕性感染者)、症状は出るが医療施設で受診しなくても軽症で治る人(軽症感染者)がいる。こうした潜在的な感染者も、感染力を持つ場合がある。
その場合、発症して受診した患者を隔離しても、潜在的な感染者からの感染を防げなければ、感染は拡大してしまう。
それでは最近の感染症ではどうだったのか、みてみよう。
まず、2002年11月に流行開始し、2003年7月に終息したSARS(重症急性呼吸器症候群)では、潜伏期間や発症初期の患者の感染力は比較的低かったとみられている。患者が本格的な感染力を持つのは、発症して肺炎に至る約5日後からといわれる。このため、発症前感染者や発症初期の患者の隔離を徹底することで、感染拡大を食い止めることができた。その結果、短期間で感染の終息に至ったとされている。