日本におけるPCR検査の拒否状況
アメリカの感染者が爆発的に増えた理由には諸々あるだろうが、初期段階でPCR検査に失敗したことが大きな要因の一つとなっている。
世界に冠たるアメリカのCDC(疾病予防管理センター)は、2月5日にPCR検査キットの配布を開始したが、ほどなく検査キットの多くに異常が見つかった。試薬が汚染されたためだという。そのため全米で開始したPCR検査のサンプルをCDCに送り返す結果となってしまった。
この失敗は、あまりに大きい。
4月9日時点でアメリカの感染者は43万人を超えたという。
外務省の関連サイトには世界各国の感染者のグラフがあるが、4月8日時点のデータを見ただけでもアメリカの感染爆発がどれほど激しいかが分かる。見るだけでも心が痛む。
この原因の一つは初期段階のPCR検査の失敗にあったことを、日本は注目しなければならない。
奇しくも日本の緊急事態宣言実施が始まった4月8日、武漢は封鎖解除に踏み切った。ピークは過ぎ安定状態に入ったことが確認された証拠だが、中国がここに至ることができたのは、3月18日付けコラム<中国はなぜコロナ大拡散から抜け出せたのか?>で述べたように、それはひとえに感染病や免疫学の最高権威である鍾南山氏の「早期発見、早期隔離」という絶対に譲らない警告を実行したからである。
4月8日、フランスからマスクを購入するための輸送機のパイロットが中国の空港に着地した瞬間、非常に厳しい検疫を受け、PCR検査で陽性が判明したというニュースが流れた。パイロットは2週間の隔離になり、1600万枚のマスクをフランスに輸送することができなくなったそうだ。
それくらい、中国におけるPCR検査隔離は厳しく、厳しい国は感染が収束し、厳しくない国(および失敗した国)は感染が拡大するということの証しと考えていいだろう。
日本が一刻も早くPCR検査の増強を実現してくれることを願ってやまない。
習近平(国家主席)が「人類に危機をもたらしている真犯人である」ことに変わりはない。その責任はコロナが終わった時に全世界が追求しなければならないが、今は日本国民がコロナから脱出できるようにするために国民が一体となって努力するしかない。そのためなら、脱出に持って行った鍾南山の警告「ともかく検査を!」も耳を傾ける価値があり、また検査が成功するか否かによって感染拡大が左右されている「現実」に注目する必要があるのではないだろうか。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。