最新記事

感染症

ニューヨーク感染者急増 ホームレス・シェルターの感染封じ込めは困難

2020年3月26日(木)17時00分
安部かすみ

タイムズスクエアも人通りがなくなったが...... Carlo Allegri-REUTERS

<新型コロナウイルスがニューヨークに蔓延する中、今問題の1つになっているのは、このホームレス問題だ......>

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染数急増が懸念されるアメリカ。感染者数は5万8998人で、中国、イタリアに次ぐ多さだ(死者795人)。

国内でもっとも感染者数が多いのがニューヨーク州だ。人口約1950万人のニューヨーク州では、感染者数が3万811人、死者285人。そしてその中でも人口約860万人のニューヨーク市がもっとも感染者最多で1万7856人となっている。

ホームレスにも広がるウイルス感染

なかでも、ニューヨークのホームレスの人々への新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されている。ニューヨーク市では子どもを含む7万以上がホームレス人口と言われている。これは全人口の125人に1人の計算だ。市内には450箇所のホームレスシェルターがあると言われており、そこで約5万8000人が寝食を共にしている。またすべてのホームレスの人々がそれらの施設を利用しているわけでもなく、約4000人前後の人々は路上生活者(駅や地下鉄、公共スペースなど)と言われている。

新型コロナウイルスがニューヨークに蔓延する中、今問題の1つになっているのは、このホームレス問題だ。

3月19日に初のホームレス感染が確認されていたが、24日になって市内22のホームレスシェルターにおいて感染者数が30人に激増したと、地元の複数のメディアが報じた。

記事によると最初の感染者は病院に搬送され、シェルター内のルームメイト8人がシェルター内の別の場所に14日間の予定で隔離されているという。

現在確認されている陽性判定の30人のうち8人は病院での治療が必要とされており、10人は別のシェルター施設内で隔離状態、7人はそれぞれの施設内で「自己隔離」、5人はシェルターを去ったとされている。

州ホームレスサービス局(DHS)は今後拡大するであろうホームレスの感染者のために、ホームレスシェルター内に500人分の隔離スペースを用意している段階だという。だが、きれいに整えられているとは決して言えない衛生環境下にあるシェルターは、今後新型コロナウイルスの「繁殖地」になるのではないかと懸念も多い。また、シェルターで働く人々への感染拡大も心配されている。

「シェルター内でのウイルスの封じ込めは困難な状態にある」

ウイルスの封じ込めとして、ニューヨーク州では3月22日夜から市民に外出制限(ロックダウン)を発令した。それでも市内ではここ数日、毎日2000~4000人ずつ感染者が増加している。州内での一般的な封じ込めにも手を焼いている状況において、ビル・デ・ブラシオ市長は記者会見で「事実上、シェルター内でのウイルスの封じ込めは大変困難な状態にある」と述べている。

ホームレスの感染者が増えていくと、シェルター内での自己隔離が難しいため、州内の大型展示会場や大学キャンパスを利用して進められている臨時の病院施設に搬送されていくことになるのかもしれない。医療従事者や、マスク、防護ガウン、ICUの人工呼吸器なども足りない中、州や市が、今後増え続けるであろうホームレスの感染問題にどう立ち向かっていくのか注目される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ中銀、インフレ鈍化を予想 見通し変化なら行動の

ワールド

米軍の一部部隊がシリアから撤退=政府高官

ワールド

米加州雪崩でスキーヤー8人死亡、残る1人も死亡と推

ワールド

米国債保有、日英で減少・中国横ばい 25年12月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方...勝利のカギは「精密大量攻撃」に
  • 4
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    アフガニスタンで「対中テロ」拡大...一帯一路が直面…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中