最新記事

日本社会

児童虐待の半数以上は、両親の喧嘩を見せられるなどの「心理的虐待」

2020年3月25日(水)16時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

年少の子どもにとっては家庭生活の比重が特に高い Romolo Tavani/iStock.

<児童虐待に対する日本社会の問題意識が高まり、相談件数が急増しているのは悪いことではないが......>

新型コロナウイルスの感染防止のため、学校の多くが休校になり、在宅勤務や自宅待機を命じる会社も増えてきた。不要不急の外出の自粛も呼びかけられているので、家庭内で親子ともにストレスがたまっていると指摘されている。児童虐待の増加を懸念する声もある。

児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は年々増加しており、1997年度では5277件だったが、2018年度では15万9838件に膨れ上がっている。虐待と見られる行為が通告される頻度が増しているためだ。最新のデータが公表されるたびに「過去最悪」と報じられるが、この数が増えるのは悪いことではない。人々の道徳意識が高くなった証でもある。

虐待には、殴る・蹴るといった身体への侵害もあれば、言葉による暴力もある。児童虐待防止法では4つの類型が定められているが、1997年度と2018年度の構成比を帯グラフにすると<図1>のようになる。

data200325-chart01.png

この20年間で構成は様変わりしている。1997年では身体的虐待が52.7%だったが、2018年度では心理的虐待が55.3%と過半数を占めている。

心理的虐待は人格を傷付けるような暴言や拒絶的対応だが、このような行為に出る親は増えているのだろう。だが最も大きいのは、2004年の法改正だ。この年の児童虐待防止法改正により、「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力」も、心理的虐待に含まれることになった(同法第2条)。

子どもの面前での激しい夫婦げんかも心理的虐待に当たる、と言うことだ。父親が母親を殴る、父母が口汚く罵り合う......。子どもにすれば、こういう光景を見せられるのはたまったものではない。心理的外傷を植え付けられることにもなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者43人に、子ども15人犠牲 

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 中間選挙にらみ

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中