なぜフランスは「人質になったジャーナリスト」を英雄視し、日本は自己責任と切り捨てるのか
Passport Denial Is Social Death
――安田はパスポート発給を外務省に拒否されている。
国が勝手に特定の国民のパスポートを発給しないのは、非常に深刻な問題だ。ジャーナリストに関する限り、その決定はその人の社会的死を意味する。本人の安全か国家の安全保障に明白な危険をもたらす事実がある時のみ、そうした措置の正当性がある。
――フランス人ジャーナリストが特定の国に行くのを政府が禁じることは?
想像できない。国民の反発も強いだろう。
――日本では、戦場に行くフリージャーナリストは「自己責任で」と言われる。フリーの人が自分の判断で戦場に行くのと、大手メディアから取材依頼を受けて行くのとどちらが正しいだろうか?
これは多くのフリーランサーが負担するリスクだ。私の場合、このリスクを取らなければ、戦争記者としては活動できなかっただろう。
最初の本格的な戦争取材は2003年のイラク戦争だった。アメリカのイラク侵攻をバグダッドから報道するため、私は取材依頼が来るまで待ったが、依頼が来たのは部数の少ないカトリック系週刊誌だった。
大手メディアはみんな同じことを言っていた。「現地に行ってから電話してください」。実際には、現地にほとんど大手メディアの記者はいなかった。
到着後間もなくラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)の特派員として働き始め、ルモンド紙、そしてルポワン誌でも記事を書いた。結局、私は戦場に行ってから、知名度の高い媒体のために働くようになった。
――人質になった記者に対するフランス政府の態度は?
フランス人は伝統的に人質への支持が非常に強く、ジャーナリストだとさらに強い。情報機関や外交官が最大限の努力をするのは確実だ。拘束された人の家族や同僚への支援も手厚い。
日本でも世論の支持があれば、政府がもっと動くようになると思われる。責任は人質になったジャーナリストではなく、テロリストにある。人質を非難すれば、部分的にテロリストを免罪することになる。
<2020年3月17日号掲載>
【参考記事】安田純平さん拘束から3年と、日本の不名誉
【参考記事】安田純平氏シリア拘束のもう一つの救出劇「ウイグルチャンネル」
2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症VS人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。