最新記事

スポーツ

東京オリンピック中止なら、テレビ局やスポンサー企業に打撃

Coronavirus Olympics Cancellation Could Be 'Financial Shock' For NBC

2020年3月5日(木)18時00分
ダン・キャンチアン

スイスのローザンヌで開かれたIOC理事会の後、記者会見に臨んだバッハ会長(3月4日) Denis Balibouse- REUTERS

<東京オリンピックに向けて放送権料の半分を買ったのが米NBC。CM枠もほとんど売り切ったという>

新型コロナウイルスの影響で東京五輪が延期になった場合、テレビ局やスポンサー企業の売上は大きく減る可能性がある。

東京五輪は7月24日~8月9日にかけて開催される予定になっているが、日本では感染拡大との戦いが続いており、開催を危ぶむ見方も出ている。

ちなみに近代五輪が始まった1896年以降、2度の世界大戦の時期を除けば開催が中止されたことは一度もない。

延期するにしても中止するにしても、大きな経済損失は避けられないだろう。組織委員会によれば、東京オリンピック・パラリンピックの「大会経費」は1兆3500億円。また会計検査院によれば、五輪関連事業への国の支出が2018年度までに1兆600億円に達したという。

テレビ局やスポンサー企業も影響を免れない。

「オリンピックを放送するテレビ局もまた、経済的な打撃を受けそうだ」とスポーツ関連の放送権に関する情報サービスを手がけるスポートカルの首席アナリスト、コンラッド・ウィアセクはメディア向けのレポートで述べる。「世界のスポーツ関連産業に与える全体的な影響を甘く見るべきではない」

米NBCは保険に加入

国際オリンピック委員会(IOC)にとって主な収入源は五輪大会の放送権料だ。

IOCが2013~16年に得た57億ドルの収入のうち、約73%はテレビの放映権料だった。

その半分近くを占めるのが米NBCが払った放送権料だ。同社が今後の夏冬4大会の放送権を得るために支払った額は計43億8000万ドル。その3年後には、次の6大会の放送権料として77億ドルを支払った。

もっとも、NBCの親会社のコムキャストにとって、オリンピック関連の収入が失われること自体は懸念材料ではない。こうした事態に備えて保険に入っているからだ。

とは言うものの、コムキャストのブライアン・ロバーツ会長兼CEOは、東京五輪が中止されれば収益に影響が出ると認めている。同社の主な収入源はCMで、前回リオ五輪での利益は2億5000万ドルに達した。

「大型イベントについては万が一の事態に備えて会社を守る備えをしており、損失が出た場合の保険に入っている」とロバーツは3日、述べた。

「だから大会が開催されなかったとしても損失は出ないはずだ。もっとも今年は利益も出ないだろう。だが繰り返すが、開催については楽観視している」とロバーツは述べた。「もし開催されなかった場合には、保険があるし契約上の保護もある」

<参考記事>新型コロナウイルス致死率3.4% WHO、東京五輪巡りIOCと協議
<参考記事>【新型肺炎】東京五輪開催、間に合うか? ロンドンが代替開催に名乗り

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中