最新記事

感染症

新型コロナウイルス「春になれば感染拡大は収まる」は本当か

2020年3月1日(日)13時18分

公衆衛生当局者や企業、金融市場は、北半球に暖かい天気が到来することで新型コロナウイルスの感染拡大が鈍化するのかどうか、兆候を得ようと努めている。写真は23日、東京の上野公園をマスク姿で歩く人々(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

公衆衛生当局者や企業、金融市場は、北半球に暖かい天気が到来することで新型コロナウイルスの感染拡大が鈍化するのかどうか、兆候を得ようと努めている。感染症拡大の季節的特徴で、分かっていることは以下の通り。

新型ウイルスは季節性があるのか

それこそ、一部の感染症専門家が願っていることだ。しかし、彼らはまだ、そう確信できない。科学者が必要な証拠を集められるほど、まだウイルスが出回ってから長くないからだ。

英イーストアングリア大学の感染症専門家ポール・ハンター氏は「われわれはとにかく、同様な広がり方をする他の疾病からの類推を続けていかなければならない」と語る。

科学者が知っているのは、インフルエンザのような呼吸器感染症や咳、悪寒には季節的な要因が影響し得るし、この季節要因によって発生の予見や封じ込めが容易になるということだ。さらに、特定の環境条件下でウイルス伝播が起きやすくなるということも分かっている。寒冷な気象、湿度の具合、そして冬の間の人々の過ごし方といったことがすべて、感染症の流行経路に影響する可能性がある。

冬は呼吸器疾患の拡大を助長するのか

英レディング大学の微生物細胞機構学の専門家サイモン・クラーク氏は「寒冷な気象が咳や風邪、インフルエンザの拡大につながると推定されるのは、冷たい空気が鼻腔や気道の炎症を引き起こし、それによってウイルスの影響を受けやすくなるからだ」と説明する。

冬季は人々が室内で一緒に固まって過ごす時間が増えがちでもある。これも感染のリスクを高める。

今回のウイルス感染症を含む多くの呼吸器疾患は、感染した人が咳やくしゃみをしたときに飛び散る飛沫を通じて広がる。専門家によると、空気が冷たくて乾燥していると、飛沫が空気中でより長く漂いやすく、より長距離を移動、より多くの人々を感染させる。

それなら春の訪れで、新型ウイルスは制圧されるのか

レディング大学のクラーク氏は「春に小康状態になることはあり得る」としつつ、「春が来ることで状況がさらに悪化することは考えにくいが、われわれは確かなことは分からない。まったく経験に基づく推測でしかないのだ」と話す。

イーストアングリア大学のハンター氏も同様で、「北半球で夏の数カ月にこの病気が急減することは考えられるが、それが再び増えるのかどうかは、まだ分かっていない」と指摘。「夏場におおむね姿を消していて、冬になって再流行しても驚かない」という。

[ロンドン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナウイルス感染広がるイタリア ローマ法王が病もバチカン重病説を否定
・新型コロナウイルスの流行で中国は野生動物を食べなくなるか
・世界経済を狂わせる新型コロナウイルスの脅威──最大の影響を受けるのは日本


20200303issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月3日号(2月26日発売)は「AI時代の英語学習」特集。自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力とは? ロッシェル・カップによる、AIも間違える「交渉英語」文例集も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査

ワールド

豪家計支出、5月は前月比+0.9% 消費回復

ワールド

常に必要な連絡体制を保持し協議進める=参院選中の日

ワールド

中国、太平洋島しょ地域で基地建設望まず 在フィジー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中