最新記事

医療

キューバが「奇跡の新薬」と医師ら400人を世界に派遣、新型肺炎治療を支援

Cuba Uses ‘Wonder Drug’ to Fight Coronavirus Around World.

2020年3月26日(木)17時50分
トム・オコナー

医療分野でこの当局者が特に問題視するのは、米国務省が「人身売買に関する年次報告書」でキューバが医療従事者を外国に売り渡していると主張していること。オバマ政権時代の国交回復で、一時この報告書におけるキューバの評価は引き上げられたが、2019年に再び最低ランクに落とされた。

キューバ外務省は米政府のこうした批判にたびたび抗議し、米政府の経済制裁こそ国際法違反であり、キューバは国際社会に人道的に貢献していると主張してきた。

「経済封鎖にもかかわらず、キューバの医師は世界59カ国で働いている。うち37カ国でCOVID-19の感染者が出ている」と、当局者は言う。

この37カ国にはグレナダ、ジャマイカ、ニカラグア、スリナム、ベネズエラなど中南米やカリブ諸国に加え、COVID-19の感染拡大で世界最多の死者を出しているイタリアも含まれる。COVID-19にはまだ有効性が実証されたワクチンや治療法はないが、キューバ当局は自国の医療協力により、国際的な規模で危機を軽減できると確信している。

「キューバで医学を学び、中南米諸国やキューバで研修を受けた医師は、世界に2万9000人以上いる。彼らはCOVID-19との闘いに全力を尽くすだろう」と、当局者は力を込めた。

アメリカは韓国などに支援要請

キューバ国内では今のところ感染拡大は抑えられている。キューバ保健省によれば、人口約1150万人に対し、3月24日段階で確認された感染者は40人で、死者は1人だ。

キューバは豊かではないが、医療部門は発達している。1959年にキューバ革命を起こしたフィデル・カストロが、教育や福祉とともに医療を社会主義革命の柱にしていたからだ。

キューバ外務省によると、「協力ミッション」で外国に派遣される400人の医師と専門家が現在、首都ハバナのペドロ・コウリ国立熱帯医学研究所で研修を受けている。同研究所はCOVID-19感染症の治療を中心的に担う医療センターに指定されている。

ドナルド・トランプ米大統領は、アメリカ国内で急激に拡大する新型コロナウイルスを抑え込むため、国際社会から協力を引き出そうとしている。米国務省は、アメリカが経済援助を行ってきた国々に医薬品の提供を要請したと報道されている。またトランプ大統領は、韓国の文在寅大統領との電話会談で、検査キットや人工呼吸器などの医療機器の支援を要請した。3月24日に韓国大統領府が発表した。

一方で、キューバの支援は断っている。2005年にハリケーン「カトリーナ」でニューオーリーンズと周辺地域が壊滅的な打撃を受けたときもそうだった。キューバ当局者によれば、今回の危機に対するアメリカからの「公式の支援要請はない」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、11月はマイナス13.7

ワールド

ロシアのミサイル「ICBMでない」と西側当局者、情

ワールド

トルコ中銀、主要金利50%に据え置き 12月の利下

ワールド

レバノン、停戦案修正を要求 イスラエルの即時撤退と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中