最新記事

日本社会

新型コロナ、休校で子育て家庭が大混乱した3つの背景

2020年3月27日(金)17時05分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

民間学童で過ごすマスクを着用した児童(3月5日撮影) Stoyan Nenov-REUTERS

<突然の休校要請によって子育て家庭の多くがパニックに陥ったのはなぜか。その生活実態は>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年3月25日付)からの転載です。

1──はじめに~政府要請で95%超の学校で休校実施、子育て家庭は大混乱

先月27日、安部首相は新型コロナウィルス感染症対策本部にて、全国の小中学校と高校、特別支援学校等に対して、3月2日から春休みまでの期間を臨時休校とするように要請した。休校の判断は地方自治体や学校に委ねられたが、ほぼ全ての学校が休校を実施した(図表1)。

Nissei200327_1.jpg

休校によって、子のいる家庭では大きな混乱が生じたが、その背景には、(1)あまりに突然であったこと、(2)日中保護者が不在の家庭が多かったこと、(3)休校による休業で収入が減少する家庭が多かったこと、という3つの理由があげられる。

2──「(1)あまりに突然であったこと」~保護者に連絡が来たのは早くても金曜午後

Nissei200327_2.jpg

まず、1つ目の「あまりに突然であったこと」だが、あらためて時系列で示すと、政府が3月2日(月)からの休校要請を表明したのは2月27日(木)の夕方である(図表2)。地方自治体や学校は、翌28日(金)に休校を実施するかの判断を行った上で、急遽、休校に向けての準備をする事態となった。保護者への連絡は早くても28日の午後であり、夕方になっても判断に迷い、保護者への連絡を出せていない学校もあったようだ。28日は金曜日であり、翌週の休校へ向けて休暇を取る必要がある保護者は、28日中に勤務先に申請をせねばならず、困惑した声もあがっていた。

また、厚生労働省は「小学生の学童保育や保育所等は原則として開所」との方針を出したが、小学生の学童保育は小学校に併設されているところも多い。小学校の休校が決定する中で、学童保育等が確実に開所するのかどうかを不安に思う保護者もいただろう。実際、学童保育や保育所等でも、感染拡大予防のために、在宅勤務で自宅に保護者がいる場合は利用自粛を呼びかける動きもある。

3──「(2)日中保護者が不在の家庭が多かったこと」~子育て家庭は約7割が共働きとシングルマザー

2つ目は子育て家庭では「日中保護者が不在の家庭が多かったこと」だ。

18歳未満の児童のいる世帯の父母の就業状況を見ると、1990年代後半では、多くが専業主婦世帯である「父のみ仕事あり」の世帯が、およそ半数を占めていたが、2000年代に「父母ともに仕事あり」の共働き世帯が上回るようになり、足元では共働き世帯が6割を占める(図表3)。

Nissei200327_3.jpg

また、多くが母子世帯である「母のみ仕事あり」の世帯は1割を占め、共働き世帯と合わせると、子育て家庭の7割は日中保護者が不在である。つまり、今回の休校によって、子育て家庭の多くの保護者は働き方を変える必要が生じた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中