世界が想定すべき新型コロナの最悪シナリオ──他の国々がこれから経験する3つの問題
PREPARE FOR THE WORST
集団感染が発生した韓国南東部の大邱市は「特別管理地域」に指定され、任意ながら外出自粛や移動制限などの措置は基本的に遵守されている。イタリア北部で立ち入りが禁止されている「レッドゾーン」は、韓国ほどの規模や厳密さはない。インドのように普段から市民生活への規制が多い国も、中国ほど厳格な措置は取れないかもしれない。
ただし、国外渡航に関しては大半の国が封鎖も辞さない構えで、中国路線の運休や減便を行っている。イランなど既に孤立している地域ほど、渡航制限の対象になりやすい。
渡航制限に感染拡大防止の効果はないと、専門家の意見は一致している。だが事態がさらに悪化すれば、今後数週間か数カ月にわたり国外への渡航がさらに難しくなるかもしれない。世界各地から人が集まるイベントは延期や中止が相次ぐだろう。
2つ目はパニック的な買い占めだ。中国では物資不足は心配されたほど深刻になっていない。輸送に携わった人々の英雄的な努力のおかげで、最も感染が拡大した地域にも農産物や飲料水は届いている。
だが香港では、感染者数が少ないにもかかわらず多くの店舗で棚が空っぽの状態が続いた。トイレットペーパーなど日用品の買い占めが起きたためだ。イタリアではパニックになった住民がスーパーに大挙して押し寄せる事態も起きた。マスクや消毒用アルコールなどは世界的に深刻な品薄状態になっている。
不安が広がればどこでも買い占めは起きるが、香港やイタリアのように政府が信頼されていない地域ではその傾向が特に顕著だ。サプライチェーンが断ち切られれば、現実に供給不足が起きパニックになった人々がさらに買い占めに走るだろう。
各国政府の本気度が問われる
3つ目の問題は差別と分断だ。感染拡大がほぼ中国に限られていた時期でさえ、アジア系差別が世界中で吹き荒れた。
中国では最初に感染が起きた湖北省の出身者が差別され、周辺国では華僑が標的にされた。欧米ではアジア系っぽい顔立ちをしているだけで「バイ菌」扱いされるありさまだ。
99年にトルコとギリシャで相次いで地震が起き、双方の支援活動が関係改善につながったように、自然災害をきっかけに国際協力が進むこともある。だが今回の危機では一部の国々でメディアがウイルスの出所をめぐる陰謀論を流し、疑心暗鬼や憎悪が世論を支配するようになった。
中国政府は米政府の支援の申し出を断り、反米ナショナリズムのプロパガンダを強力に展開。メッセージアプリ微信(WeChat)ではアメリカがウイルスを広めたという陰謀論が検閲もされずに飛び交っている。