最新記事

韓国

韓国と中国の関係に影を落としはじめた新型コロナウイルス

2020年2月10日(月)16時00分
佐々木和義

ソウルの市場で消毒作業が行われた 2月7日 Heo Ran-REUTERS

<新型コロナウイルスは、韓国でも経済に影響を及ぼし始めている。また、嫌中感情の広がりは、検討されていた習近平中国国家主席の訪韓と韓中関係の修復に影を落としている......>

新型コロナウイルスの影響で、ソウル明洞のロッテ百貨店本店が2020年2月7日午後2時から3日間休業した。同店を訪れた中国人観光客に感染が確認され、店内の消毒を実施するためである。感染者が訪問したEマート孔徳店も消毒を行うなど休業が相次いでいる。

ソウル市中区の新羅免税店は保健当局から1月20日と27日に感染者が同店を訪れたという連絡を受け、2月2日から6日まで臨時休業を実施して消毒作業を行なった。

新世界百貨店と現代百貨店も消毒作業を実施するため、臨時休業を決定した。プレジデントホテルは感染者が宿泊したという連絡を受け、感染者の動線を閉鎖して予約受付を停止している。ホテルと同じ建物に入居する日本航空は空港にある事務所で業務を行うことを決め、HISや日本政府観光局は職員に自宅勤務を命じるなど出勤を禁止した。

中国からの部品が止まり現代自動車は生産を停止

また新型コロナウイルスの影響は自動車業界にも飛び火している。「ワイヤーハーネス」の生産を依存する中国で春節休暇が延長され、在庫が底をついたのである。

ワイヤーハーネスは自動車を組み立てる初期段階に取り付けられる部品で、車種やモデルによって異なるなど管理が難しく、自動車工場は在庫を最小限に抑えている。部品会社は韓国とカンボジア、ベトナムにある工場の生産を増やすが、韓国が輸入するワイヤーハーネスは87%が中国製で、代替する物量は確保できない。

双竜自動車は2月4日から工場を停止し、現代自動車は7日から起亜自動車も10日から生産を停止した。双竜自は13日、現代自と起亜自は12日から再開したい考えだが、いつ正常化できるかは不透明だ。

さらに深刻なのが必要な部品を適時に納入するジャストインタイム(JIT)で工場と繋がっている部品会社だ。韓国産業研究院は自動車生産が1週間停止すると、部品会社約4300社の被害は1兆4000億ウォンに達すると試算する。2018年度の従業員300人以上の自動車部品業者の営業利益率は3%、300人未満は1%で資金的余裕はない。現代自グループは約350社の中小協力会社を対象に前倒し決済や無利子融資など1兆ウォン規模の支援を行う計画だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中