ブレグジットで「EUの中心地」となった小さな村で感じるEUの意義
「ヨーロッパ全体にとっては(ブレグジットは)悲しい日だ」 Euronews-YouTube
<イギリスが欧州連合を離脱したためEUの地理的構図が変わり、ドイツのガートハイムという小さな村が、EUの正式な「地理的中心地」となった......>
ドイツはバイエルン州北部、ヴュルツブルク群に、ガートハイムという小さな村がある。人口約80名。菜の花畑に囲まれた1本道を走るのはバス2路線のみ、信号は1か所しかない。
そんな村がこの2月、にわかに世界の注目を集めることとなった。イギリスが欧州連合を離脱したためEUの地理的構図が変わり、このガートハイムがEUの正式な「地理的中心地」となったのだ。
テレーザ・メイ前首相を名誉村民に?
1月31日金曜日の夜、ガートハイムでは村民が集まり、記念すべき日の準備を始めた。畑に囲まれた広場にはためくのはドイツ、EU、そして、ガートハイムが所属する行政管区ファイツへーヒハイムの旗だ。東経9度54分 07秒・北緯49度50分35秒に位置する新中心地は、村民が所有する畑の真只中にある。
喜ぶ住民のなかからは、この小さな村の歴史的な出来事を記念して、テレーザ・メイ前イギリス首相をガートハイムの名誉村民に、という声も上がっている。しかし、多くの住民の心境は複雑だ。ファイツへーヒハイムの長、ユルゲン・ゲッツは「もちろんガードハイムにとっては喜ぶべきことだ。しかし、ヨーロッパ全体にとっては(ブレグジットは)悲しい日だ」と述べている(ロイター)。
EUの「へそ」の経済効果
うれしいニュースは突然発表されたわけではない。2017年3月29日、テレーザ・メイ前首相がリスボン条約第50条を履行しブレグジットを宣言すると、パリの地理情報エンジニア施設IGNの地図学者によって、新中心地はその日すぐさま算出された。EU全域をデジタルで平坦化し、実際に布きれを持ち上げるようにして正確な中心地を特定したという(ガーディアン)。
そのニュースをラジオで聞いたゲッツは、「初めは、ちょっと早いエイプリルフールのジョークかと思った」と思い返す。EUの中心地は2004年、おもに東欧の10カ国が加盟して以来ずっとドイツにある。さらに2007年にルーマニアとブルガリアが加わり、2013年にクロアチアが加わった。クロアチアが加わった時点でセンターとなったのが同じバイエルン州のヴェステルングルント、ガートハイムの56キロ北西だ。(同年、フランス海外県のマヨット島が加わると、中心は東に500メートルずれた。)