右傾化するポーランド、LGBT差別政策導入で問題に
雑誌で「LGBTフリーゾーン」のステッカーを付録にし物議を醸した...... Kacper Pempel-REUTERS
<保守化・右傾化が進むポーランドでは、全国80以上の地方自治体で性的マイノリティへの差別的政策の導入が進められている......>
保守化・右傾化が進むポーランドで、性的マイノリティへの差別的政策の導入が進められている。全国80以上の地方自治体がLGBTなどの「異質のイデオロギー」を受け入れないとする「LGBTフリーゾーン」を宣言している。これに対し欧州議会は、昨年12月末、賛成463対107(棄権105)でこれを非難、EUの資金が差別行為などに用いられないよう監視するとポーランドに通告した。
LGBTは「輸入されたイデオロギー」
一連の論争は昨年2月、リベラル寄りのワルシャワ市長ラファウ・トゥジャスコフスキがLGBTの権利を保障する声明に署名したのが発端だ。市長がWHOのガイドラインに沿ってLGBTを学校の性教育に取り入れることを宣言すると、保守系の政治やメディアが激怒。
地元の保守活動家ヤセク・コトゥラは、「LGBTフリーゾーン」運動を率い、「LGBTは異常で、病んだ少数派が健全な社会の主流に自分たちを押しつける試みのように思える」とテレグラフに語っている。「熱心なクリスチャン」のコトゥラによると、LGBTは「雌鶏を襲うキツネ」であり「孫の世代のために西洋の退廃と俗化と戦っている」という。
ポーランドでは、国土の約3分の2、あるいは南東部を中心に80以上の自治体がいわゆる「LGBTフリーゾーン」を宣言している。これらの地域では、寛容を説く行為や、平等を推進するNGOなどへの資金援助が禁じられている。
また、与党「法と正義(PiS)」党首で前首相のヤロスワフ・カチンスキは、ワルシャワ市長の声明は「家族と子供たちに対する攻撃」であり、LGBTはポーランドを脅かす「輸入された」イデオロギーであると述べた。
7月には、ポーランド東部ビャウィストクでのゲイ・プライド・パレードでLGBTのアクティビストたちが行進を始めると、一部の観衆が石や卵を投げ始め、また汚い罵り言葉を叫んだ。警察は催涙ガスで対抗、30人以上が逮捕された。
さらに同月、与党派の雑誌『ガゼタ・ポルスカ』(発行部数11万)が、LGBTコミュニティを象徴するレインボーカラーの上に大きな黒いバツ印をのせ、「LGBTフリーゾーン」と書かれたステッカーを付録として発売。これについては野党や性的マイノリティの権利擁護団体だけでなく、駐ポーランド米大使からも非難の声が上がり、さらに、裁判所によって販売の一時差し止めが命じられた。