最新記事

ジェンダー

性暴力から逃れてイギリスにきた女性の3分の1がまた襲われる

Asylum-seeking Women Abused Again While Destitute in Britain

2020年2月13日(木)16時49分
シャンタル・ダシルバ

路上生活を強いられて再び襲われることも Tunatura/iStock.-iStock.

<女性支援団体の調査で、難民認定待ちの女性たちの置かれた絶望的な苦境が明らかに>

祖国で性暴力を受け、イギリスに逃れてきた女性の3分の1が、再び性暴力のターゲットにされていたことが、最新の調査で分かった。

女性の難民を支援するイギリスのNPO「難民女性のための女性」が2月11日に発表した調査結果は、祖国で性暴力の犠牲になり、安住の地を求めてイギリスに来た女性たちが直面する現実を浮き彫りにした。

調査の対象となった106人の女性のうち32人が、祖国でレイプされるか性暴力を受けた後、イギリスで「衣食にも事欠く」生活を送るうちに、またも被害に遭ったと訴えた。イギリスで虐待されたという女性たちのうち、少なくとも25%が路上生活を送り、屋外で寝ているときに襲われたと話している。

「難民女性のための女性」の政策調査コーディネーター、プリシラ・ドゥディアは本誌の取材に対し、日頃の活動の中で、祖国で性暴力に遭い、イギリスで「再びトラウマを受けた」女性の相談に乗ることはよくあるが、それでも今回の調査結果には「ショックを受けた」と語った。

人身売買の犠牲者

「こうしたケースは増えている。過去に性差別による深刻な暴力を受け、この国に来て再び被害に遭い、心的外傷を負った女性の話を何度も聞いた。それでも、この調査で明らかになった事実にはショックを受けた。被害者の多さに驚いた」

イギリスは、祖国から逃れてきた人々に「安全な避難場所を提供してきた長い歴史を誇る国だと、私たちは信じてきた」と、ドゥディアは言う。しかし英政府は絶えず女性たちの希望を挫き、イギリスでも暴力と貧困の罠にはまるようなことを強いてきた。

106人の調査対象者の78%は、出身国で身体的な虐待や性暴力など「ジェンダー(伝統的な男女の役割意識)に起因する暴力」を受けたと述べた。およそ半数は政府当局者による暴力を受け、42%は拷問され、ほぼ3分の1は兵士、刑務所の看守、警察官にレイプされていた。

イーブリンと名乗る女性は、西アフリカから人身売買でイギリスに連れてこられ、その後6年間極貧生活を送ってきた。イギリスに行けばまともな暮らしができると思っていたが、待っていたのはさらに過酷な地獄だった。

「人身売買でイギリスに連れてこられた」と、彼女は調査スタッフに話した。「その男は私を監禁してレイプし続けた。何とか逃げ出して、難民認定の手続きをしたが、内務省は私の訴えを信じてくれなかった」

<参考記事>マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける
<参考記事>災害での死者数は、なぜ女性の方が多いのか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中