最新記事

韓国

韓国で強まる、日本の放射能汚染への懸念

2020年1月23日(木)18時00分
佐々木和義

韓国国内産食品の検査はほとんど行われていない

日本産食品等の放射能検査を実施する一方、韓国産の食品や日本以外の国から輸入した食品の検査はほとんど行われていない。

2014年1月、ソウルでスイーツの国際イベントが行われ、主催者は欧州などから原材料を輸入した。輸送の際に日本の港を経由した原材料が検査対象となり、一部から基準を超える放射性物質が検出されて輸入が拒絶されたが、欧州から直送した原材料の検査が行われることはなく、イベントで使用されている。

スイーツ材料に含まれる放射性物質の基準は、日本と韓国は1キログラムあたり100ベクレルで、EUは1250ベクレルである。韓国の基準は370ベクレルだったが、福島原発の事故の後、日本に追随して引き下げた。

また、19年10月、韓国内で飲料用の地下水76カ所から基準値の最大157倍のウランが検出されている。2007年にも環境部が世界保健機構(WHO)勧告値の109倍のウランが検出された地域に地下水の飲料を禁止する通告を出したが、汚染の可能性が浮上したのは2003年で、4年間放置されていた。

韓国政府とともに日本の放射能汚染を批判する環境保護団体グリーンピースだが、2016年、韓国の原発に警鐘を鳴らしている。国土面積当たりの設備容量や原発密集度が世界で最も高く、同団体は半径30キロメートル以内に380万人が居住する古里(コリ)原発を「原発が6基以上集まっている世界の原発団地で、最も居住者が多い」と懸念を述べている。

日本の厚生労働省は、福島原発の事故以降、食品中の放射性物質の基準を引き下げた。生産者は出荷時に検査を行い、また測定限界以下など国より厳しい基準を設ける小売店もある。少なくとも日本の正規ルートで基準を超える食品が消費者に届くことはないはずだ。韓国に輸出される食品も同様だが、日本産食品には、過剰とも言える規制が実施され、韓国の国内産食品には、安全が確認されていない"安全神話"とも言える多くの食品が食卓に並べられているのが実情だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中