最新記事

韓国

韓国で強まる、日本の放射能汚染への懸念

2020年1月23日(木)18時00分
佐々木和義

韓国では日本の放射能汚染への懸念が高まった...... 写真は2013年 Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国で日本産食材の放射能汚染への懸念が、日本政府が半導体などの韓国向け輸出管理を強化した昨年7月以降高まっている......>

韓国オリンピック委員会は東京五輪に参加する選手団に食事を提供する支援センターとの契約を完了した。選手団の滞在先として選手村から約15分離れたホテルを借り、国家代表選手村から調理師を派遣して、韓国から空輸する食材で参加選手の食事をサポートする計画だ。

これは日本産食材の放射能汚染を懸念してのものだ。こうした過剰ともいえる対応は、昨年7月に日本政府が半導体などの韓国向け輸出管理を強化して以降、強まっている。

日本産食材への規制は強まった

福島第一原子力発電所の事故を受け、韓国は日本産食材の輸入を規制し、日本政府機関が発行する証明書の添付を義務付け、全品検査を開始している。輸入規制を設けた54カ国のうち、2020年1月までに34カ国が規制を撤廃したり緩和する国が増えるなか、韓国は日本政府が韓国向け輸出管理を強化した昨年7月以降、規制を強めている。過去に放射能が微量検出された品目の検査を2倍に増やすなど、検査対象を拡大した。

ソウル市は19年8月から1ヶ月、市場やスーパーで売られている日本産農水産物や日本産原料が含まれる加工食品を検査して結果を公開すると発表した。期間中、セシウムやヨウ素は検出されていない。日本の食品は出荷時に検査を行い、輸入時には韓国政府も検査する。検出される可能性はほとんどない。

さらに韓国食品医薬品安全処は、2020年1月7月、日本製化粧品のマスカラやアイライナーから放射性物質が検出されたとして、当該製品の販売中止と回収措置を行った。安全基準値より低いが、化粧品に使用できない原料が検出されたとして同製品を購入した消費者に返品を呼びかけた。同製品を製造したメーカーは、原料調達や製造過程、また出荷前にも検査を実施し、問題ないと判断した上で販売しているとして代理店を通じて異議の申し立てと情報開示を求めている。

韓国与党も根拠が不明な日本の放射能汚染図を公開

19年9月に韓国与党「共に民主党」が、根拠が不明な日本の放射能汚染図を公開すると、外務省は在韓日本大使館のホームページを通じて、福島市 、いわき市、東京、ソウルの放射線量を公開した。日本国内は各自治体、ソウルは韓国原子力安全技術院の測定値を、休館日を除く毎日更新している。

また、「共に民主党」が公開した地図には東京五輪の主要競技場の土壌に含まれるとされる放射性質量が記載されており、福島あづま球場は1平方メートルあたり205万7800ベクレル、宮城スタジアムは同4万8000ベクレル、埼玉スタジアム同20万3800ベクレル、国立競技場21万9480ベクレルなどの数値が並んでいた。

同党は出典を「みんなのデータサイト」としているが、同サイトの福島あづま球場に近い測定ポイントは14万5200ベクレルで14倍の開きがあり、国立競技場も一番近い新宿区片町が1万9100ベクレルで同じく11倍以上、埼玉スタジアムに最も近いポイントは200ベクレルで、共に民主党の地図とは3桁も異なっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中