「環境難民」を政府は追い返せない──国連人権理事会
Climate Refugees With Credible Fears Cannot Be Turned Away: United Nations
「国や国際社会が断固たる努力を行わなければ、気候変動の影響を受けている国の人々は、国連人権規約の第6条(生存権)または第7条(拷問や残虐な刑の禁止)で認められた権利を侵害される可能性がある。そうなれば、迫害を受ける危険がある国に難民を送還してはならないとするノン・ルフールマンの原則が適用される」
アムネスティ・インターナショナルの調査員であるケイト・シューツは、「人権理事会のメッセージは明白だ」と言う。「太平洋島しょ国は、国が水没するのを待たずして、市民の生存権を守る責務を果たすべきということだ」
人権理事会の判断は、将来、気候変動が人々に地球規模の移動を強いることになるかもしれないという警告でもある。
「すべての国々には、気候変動のために住む場所を失った人々を守る人道上の責務がある」と、アムネスティ・インターナショナルは言う。「そのためにはまず、気温の上昇を産業革命前の水準から1.5℃以内におさめる行動を起こすことが不可欠だ」
シューツは、太平洋島しょ国は「気候変動が原因の移住問題における『炭鉱のカナリア』だ」と言う。
「キリバスやツバルのような島しょ国は、海抜がわずか1メートルか2メートルしかない」「そこでは居住可能な土地や飲料水が手に入りにくくなるなど、気候変動の影響で必要最低限の生活もできなくなりつつある。各国政府はこの現実と、温暖化が太平洋地域の人々の生命と生活に及ぼしている差し迫った脅威について、よく考えるべきだ」
(翻訳:森美歩)
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