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オーストラリア

オーストラリア森林火災、「ウォンバットが野生動物を救出」は本当?

2020年1月17日(金)14時30分
松丸さとみ

英ウェブメディアUNILADは、オーストラリアで以前、別の森林火災が発生した際に、さまざまな小動物がウォンバットの巣に隠れて焼死を免れたことが観察されており、今回の話は、そこが出どころではないかとしている。ただし今回の森林火災においては、ウォンバットのそのような様子は記録されていない。

ウォンバットの巣穴から小動物がごそごそと......

豪メルボルン大学は、今回の森林火災が始まる前の昨年4月、1本のビデオをYouTubeに投稿していた。同大学の学生らがウォンバットの巣穴を観察したところ、さまざまな野生動物が穴から出てきたというものだ。約1分半の動画には、午後9時半から午前2時ごろまでの約4時間半の間に、うさぎやコアラが、ウォンバットの巣から出てくる様子が収められている。

A wombat, a koala and a rabbit in a burrow


メルボルン大学のサイトによると、ウォンバットは通常、複数の巣穴を作り、そのどれかで過ごしている。生涯の3分の2を巣穴で過ごすが、集団ではなく1匹で行動する生態であるため、その広い巣穴の中には、通常は1匹しかいない。大きく安全で快適な巣穴は、他の小動物にとっても捕食者から逃れる避難場所として使われることもあるようだ。

ただし、巣穴に入ってきた小動物にウォンバットがどう反応するかについては、専門家によっても見解は異なる。ウォンバットの巣穴の動画を撮った学生らの指導者だったキャス・ハンダサイド博士は、ウォンバットは怒りっぽいため、巣穴で他の動物と遭遇したら追い出すだろうと話している。

前述のフレンチ氏は、ウォンバットが危機に際して、他のウォンバットや蛇、フクロネコ、ポッサム、バンディクート、ハリモグラ、フサオネズミカンガルーなどと自分の巣穴をシェアしているのを見たことがあるとIFLSに話している。ただしこれはあくまでも非常事態のときに限られる。またウォンバットがこれらの動物を自分の巣穴に率先して誘導することはないし、他の動物も巣穴の存在を知っているはずなので、ウォンバットによる誘導は不要だろうと同氏は加えた。

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